狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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そう、なんですね。
てっきり、御言様にはそう言う不思議なお力があるのかと…
(思った事を口にしただけなのだが、後ろにいる御言様は耐えられぬと言った様子で大きな口を開け、その笑い声を広間に響かせる。
金色の目が涙で滲みながらも細められ、大きく開かれた口からは鋭い犬歯が覗く。
ここに来てから、御言様に笑われる回数が多いような気がしてならない。
こちらは現代生まれ、現代育ちの生粋の現代っ子。施設暮らしという一般とは少し環境が特別だったが、それ以外は普通の人の子だ。
平安時代に重宝されていた陰陽師や巫女様のように見鬼の才も霊力も、言葉を言霊にする能力も無い。普通の子供。
それが突然、永く生きるお狐様の嫁として引き取られて、今こうして御言様が目の前にいる。
平安時代には安倍晴明の母、葛の葉や傾国の美女、玉藻の前。と狐との接点は多い。
そんなお狐様が実在しているのだ、もしかしたら人には無い能力、妖力や霊力なんかを扱えるのかも、それらを見れるのかもと期待してしまうもの。だが、それらを悉く否定するように笑われる事が多い。書物で読んだ、摩訶不思議な能力。見てみたくないかと言えば嘘になる。
流石に笑いすぎでは無いかと、ここ最近で少し丸みを帯びてきた頬を膨らませて少しぶすくれる。
見れるのかもと思ったのにまた笑われた。
暇だったから本を読んでいたのだが、それのどこに御言様の笑いのツボがあるのか分からない。
頭を撫でられれば、艶を取り戻しつつある自分の黒髪に御言様の細く長い指が通るのを感じる。
これまで何人ものお嫁さんが居たからなのか、その力加減は絶妙で痛くない。
体勢を崩した御言様を見れば、何を言おうかと口を開けては閉じを繰り返していた時に、自分の視線の先にあるものに気付いたらしい。
ふわふわな尻尾が頬を撫でれば、ふわふわ!と表情が明るくなり、嬉しさからか瞳もキラキラと輝いて頬も興奮からか赤くなる。
ふわふわといつもの語彙力も無くして、箸を置いたままなのを良い事にそろそろとその金色の魅力的な尻尾に自分の小さな手を伸ばす。
軽く撫でてみれば、まるで絹のように手触りの良い尻尾。
わぁ……と笑みを浮かべれば、尻尾を抱っこするように抱えてみて)
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