狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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(御言様を見送って自分ももぐもぐとお昼ご飯を食べ、施設よりも豪華で使っている食材達もきっと比べ物にならない位良いものなのだろうが、味の違いなど分かる訳もなく、本来なら美味しいと笑みを浮かべて食べれる筈なのに、広いこの空間にポツンと1人で、部屋に響く物音も自分が立てる食器を置くものだけと言う心寂しいこの時間。施設では必ず皆が揃ってからご飯だったし、ここに来てからも食べる必要は無いとはいえ御言様が一緒だったから、こうして完全に1人でのご飯は初となる。昨日はきちんと美味しいと感じた筈なのに、今では味がわからない。と言うよりも美味しいという気持ちよりも時間に置き去りにされたかのようなこの静か過ぎる空間に対して、寂しいという気持ちが勝ってしまっている。しばらくはご飯を食べていたが、昨日よりも量が少ないご飯の量でお腹がいっぱいになってしまい、大半を残したそれらを見て勿体ないと思いつつも箸を置いて、手を合わせ「ご馳走様でした」と挨拶をする。そうして立ち上がり、部屋から出れば稽古の時間がと言ってまた稽古部屋へと移動をし、今度は学校で習うような座学を中心とした時間。食後なのもあり、うっつらうっつらとして眠気と戦いながら午後の稽古を終えれば、あとは夕食とお風呂で一日は終わり。縁側で足をプラプラさせながら、真っ赤な彼岸花に青紫色が美しい紫陽花が織り成す、色彩豊かな美しい庭園に響くのは水音。池の水は透明に透き通り、中で泳ぐ錦鯉達は悠々気ままに泳いでは跳ね、たまにポチャンと言う音をさせているのをじっと見つめており。しばらく縁側を眺めていたが、ふと御言様は眠りにつくと言っていた。昨日来たばかりなので当然ではあるが、自分は御言様について知らない事が多すぎる。あのお狐様はよく寝るのだろうか?どんな風に寝ているのか、あの狐耳は柔らかいのかな?と気になってしまえば頭の中を占めるのはその事ばかりになってしまった。すこしソワソワして悩むも、あのモフモフしていそうな狐耳は大変魅力的である。寝ているならその間にほんの、ほんの少しだけ触る事が出来ないかな?と考えれば、女中の人達に御言様の寝ている部屋の場所を聞けば、その部屋へと足を進め、そっと障子を開けて足音を立てないように部屋の中に入れば、畳の上で寝ている御言様を見つめ。そして畳の上に広がる綺麗な髪の毛を見るとむずむずとちょっとした好奇心と悪戯心がわき、その髪をそっと触れてみればサラサラとした手触りにやや興奮気味になりながらもう一度だけ髪に触れると、次は起こさないようにと気をつけながら髪の毛を三つ編みやら編み込みやらで編み出し、髪の毛で遊び出してはちょこちょこ御言様が起きる気配は無いか確認しながら編み込み作業を続けて)
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