狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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肝……?──ぶはっ…!!はっはっはぁっ!!生肝ときたか!ははっ…!──今代の嫁は些か博識で叶わんなぁ!
(爪先からでも伝わる心音のなんと心地の良いことか。人間特有の香りも温度も匂いも、鼓動さえ愛おしく思えるのは長生き故の性なのかはあまり分からないが子供の小さな鈴の音を転がしたような音は一層聞いていて気持ちが良いもの。つい、と手を離して目の前にある料理の果物を器用に指先で摘んで口に運び一つ二つと咀嚼をしては嚥下。したところで問われたそれにはた、と何処か不思議そうに狐につままれたようなまるでそれで、ひとつ間を置いた所で吹き出しては腹の底から笑いが溢れて止まらない。言い方が悪かったし今どき生気などと言われてもピンとこないことなんて当たり前、否“ここに”当たり前なんてものは存在しないがそれでも少しは怯えてしまうか脅かしてすまないと揶揄う気持ちも露知らず返ってた言葉は想像の斜め上で心底可笑しくて仕方がない。何度も肩を揺らして口元を覆い隠すと口が裂けそうなほど大きく開いたそこからは笑いと歪な犬歯が覗く。暫くして呼吸を整えてはひとつ咳払いをしてまだ微かに震える肩を何とか抑えようと必死になればなるほど口の端が持ち上がって再び大笑いしそうになってしまうがそれでは可哀想かともう一度大きく咳払いをしてはポンポンと頭を撫でて)
──、いやすまないね。存外面白い娘で私は嬉しい限りだ……私の言う生気はね、そうさなぁ…人間のエネルギーとも言うべきものか。“氣”とも言うか。それを摂取するのが真に美味よ……強いて言うならば、欲をひとつ言うと──“魂”が一等品だがね。………、ゆっくりお食べ、無理して全ては食べなくて良い。また会おう。稽古だのつくだろうが頑張るんだよ。
(考えるように指先を顎に持ってくるとどう説明した方が分かりやすいものかと思案する。簡単にも思えるが上手く言葉に表せられないのは自分にとっての当たり前が人間にとっては普通では無い非常識故に、選ぶ言葉に迷ってしまうが魂だけはどんな言葉でさえ譲れないものがある。最後にとん、と先程と同じように相手の心臓部分を爪先で軽く叩いて笑みを浮かべた所で使用人が入ってくれば少しだけ目元を細めつつ膝に抱えていた相手をそっと下ろしてよっこいせと立ち上がれば相手の小さな頭を撫でてやり片手を握ると掌にいつの間にか狐のような模様や古代文字のようなそれが書かれた札を1枚握らせ『“御守り”だ。肌身離さず持っていなさい』身を屈めると声を潜めて耳打ちし、何処か名残惜しそうな相手を悲しんでいるようなそんな目で見詰めるとそのまま使用人と共に部屋を後にして行き)
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