狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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ありがとうございます。
えっと……いただきます、人間のご飯が美味しくない……それは……とても食事の行為そのものが億劫になるのでは…………何なら、美味しいと感じるのか聞いても良いですか?
(まるで慈しむように頬を優しげに撫でられれば、親の愛は勿論誰かからこうして優しい言葉を投げかけられたり、触れられたりなんてこれまでの生活には無く、施設の人達も決して悪い人達ではなかったが、あそこは自分よりも幼く小さな子達もおり、どうしても施設の人達は赤子や自分よりも幼い子供に付きっきりになりがちになる。だからなのかこうして誰かに触れられるなんて思っても無かったし、何より自分は本来子供が親から受ける無償の愛を知らない。そんな自分が親よりも育むのが大変だと書物で読んだ夫婦の愛を知るのか、しかもその相手は人では無い者。飼っていた犬や猫が不意に野生の本能で飼い主を傷つけるように、何らかの不敬でこの方の機嫌を損ねて嫁としての役割を果たせないと判断され、離婚。及び施設に逆戻りするのでは無いかと不安で仕方ない。今日から始まる教養を含めた勉強もきっと身も心もすり減らすには十分な程厳しいのは、引き取られてすぐの教育で容易に想像出来る。気分はやや落ち込むが、目の前には見たことの無い豪勢な朝食。人間楽しみがあればある程度は乗り越えられると読んだ事があるし、これからはご飯を楽しみに生活しようと決めて差し出された箸を受け取り、年齢とは不相応な丁寧かつ綺麗な所作で滑らすように箸を持ち直し、頂きますと挨拶して、いざご飯!となった所で御言様の言葉を聞けば、美味しさが分からないということは食に関して興味もなければ、その楽しさも分からないという事。それは楽しむ為の食事ではなく、単なる作業でしか無い筈。初代花嫁からの習わしなのか分からないが、美味しくも無いものを毎日食べると言うのは意外と辟易するものだ、それを何百年と続けてきている目の前の彼は一体何なら美味しいと感じるのかと味覚の違いがどのようなものか気になり、遠慮がちに問いかけて)
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