狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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──重くなどない。人の子なんぞ風船を持つのと同じよ、もう少し近くに来なさい。
(拒まれれば無理にしないが待っていると遠慮がちに膝の端っこに座る相手。重くは無いのかと心配する相手だが、そんなことを心配するものかと意外に思えてしまう。人間なぞ軽すぎる、否この無駄な怪力は何でも軽く人の子、ましてや子供なんぞ片指ですら吹き飛ばすことさえ簡単なこと。重いなぞ思う事もないが、こうも心配する相手は遠慮からくるものかとも考えるが愛いところもあるものだとなおのこと気に入ってしまう。満足気に頷くも左腕を伸ばし左膝に座る相手の腰へ伸ばせば引き寄せて、その際に香るそれに僅かに目元を細めつつ空いている右手を頬へと持っていくと、柔く少しばかり血色の悪いそれは今までの生活であまり良いものを食べさせて貰えなかったせいか慈しむように長い爪で怪我をさせないよう気をつけながら指の腹を使ってひと撫でしては満足したのか手を離して目の前に広がる料理へと目をやり相手へ箸を差し出して渡すとだらしは無いが近くにあった果物へ手を伸ばすと指先で器用に持ちひとつ口に運びながら笑みをひとつ)
好きなものをお食べ。私は人間の食べ物の美味は感じられないが、きっとお前の舌に適うものだと思うよ。
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