狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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………引き取られるなら、普通のお家が良かった…
(数日程前に自分が入れられていた孤児院の施設に巫家の者と名乗る人達が女児を1人引き取りたいとやって来た、施設の人も施設の人で大喜びし、まぁ、普通なら引き取る理由を聞くものなのか自分では分からない、それでもそれなりに子供が居た中で自分の何がこの人達に気に入られたのかは分からないが引き取られた。それからはとてもではないが耳を疑うような言葉ばかり言われた、曰くお前は我が家_巫家が代々崇める狐、御言様の嫁になる。曰く御言様に失礼があってはならない、これから作法等の教育、躾がある。曰く御言様に気に入られる事だけがお前を引き取った理由になる、し損じたらどうなるかわかっているな?と……確かに日本古来より狐とは密接な関係だ。例えば平安時代、帝を誑かしたとされる傾国の美女であり九尾の狐とされた玉藻の前、同じく平安時代で活躍をした大陰陽師安倍晴明の母は葛の葉と名付けられた狐と言われている。確かに日本と狐は密接だ、だが…それはあくまで昔の話であり本当かどうかも分からないフィクションに近いものだと認識していた。それがどうだ実際にこの家には長い時を生きてきた所謂妖狐と呼んでも良いような人ならざる者が存在し、崇拝されてきて、自分はその嫁にと選ばれた。笑い飛ばしたくもなる内容だが、それらを話した人達の真剣な顔と今されている身支度、どう考えてもそれが本当だとしか言えないようなそんな雰囲気の中、嘘だ、まやかしだなんて言える程自分は馬鹿ではない。見知らぬ人が自分の髪をブラシと梳いて髪を整え、また別の人は自分に所謂巫女服と呼ばれる白地に裾に赤い糸で縫われた上の服に、赤い袴、足袋を着せて着々と支度が終わっていく。彼等の言う御言様がどんな方でどんな性格でどんな事で逆鱗に触れるのかそれすら教えてくれたなかった以上、自分が一緒に暮らす中でそれらを手探りで探る他ないだろう、それはきっととても気を張りつめて生活しなければならないし、とても息が詰まるだろう。でもそれをしなければ自分の居場所は無くなくってしまう、やるしかない。それでもつい誰にも消えないように気をつけた大きさで零れ落ちた本音は間違いなく自分の気持ちそのものでしか無かった。そうこう思考を巡らせている内に支度が終わったらしい、これから御言様の所へ向かう、顔を上げても良いと言われるまで決して顔は上げるなそんな事を言われながら、前を歩く厳格そうな女性に着いていき、竹林を抜け大きな日本屋敷へと辿り着く。見た事ない大きさのお家、古き良き日本屋敷と言った整えられた庭や池周りを見渡して見たくなるが、きっとそれは前を歩く女性にバレてしまう、それは出来なかった。そうして歩いて奥の部屋へと着けば、大きな御簾が自分の前にあり、その真正面に1枚の座布団を敷かれた所に1杯のお茶が置かれそして自分は正座をし、いつその御言様が現れるか分からないため三つ指をついて頭を深く下げた状態にしておく、こうすればいつ現れても失礼にはならないだろう。だが気にかかるのは視界の隅に目に入るあの赤い彼岸花だ、彼岸花は日本でも咲く、咲きはするが咲く季節が夏であり、今の季節では咲かないはずの花が何故咲いているのか__そういえば、彼岸花はあの世とこの世の境、もしくはあの世で咲く花とされているから彼岸花と言うのは思い出した。ここはどこなのか現世なのかもしくは鳥取にあるとされる道反神社の大岩ような黄泉比良坂の境のような場所なのか、もしくは黄泉の国なのか……考えても考えてもその答えは見つからない、途端に恐怖心から体が強張り、床へ着く手がカタカタと小さく震える。怖い。自分は失敗すればあの世へと送られてしまうのではないかと思考が定まらず負の感情へと引っ張られる。とにかくそうならない為に御言様に気に入られなければ強くそう思いながら、その御言様が現れるのを頭を下げ続けながら待ち)
(/ 初回文をありがとうございます!
ロルがマンモスロルになってしまいましたが、身支度を整え終わり、御言様との謁見前まで進めさせて頂きました。これからよろしくお願いします。)
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