「私の上司が言うにはこの物件らしい。防音壁完備の住宅だ。」 彼女は机に積みあがっていた資料の山から不動産会社のチラシを取り出す。チラシには極端に広くも狭くもない、言ってしまえばごく普通の家族が住むような、気持ち程度広めの住宅が載っている。 「…広さは…すまん、ごく普通だな。」 上司の呟きに反応した環はこの世の終わりかと思うような溜息を吐いた。 「ガチで最悪…人生で一番絶望したかもしんねえ。」