嘗ての記憶を悪夢と名付ける、 2022-05-31 18:28:12 |
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(淡々と生きてきた。つもりだった。確かに三者から言わせれば不幸な人生かもしれないが、かと云って悲観したところで何ら変わりはしないのだ。
……こんなに馬鹿馬鹿しいことを考えたりはしなかったのに一体何が自身にそうさせたのか考えを巡らし、そして、目の前の光景をもう一度視認する。路地裏で極普通にありふれた暴力沙汰。否、ありふれたと云っても実際に目の当たりにしたのは人生で初めてである。
たった一人相手に四、五位で一斉に掛かろうとしていたのがつい先程、既になぎ倒され蹴散らされの惨事と化していて目を疑う。繁華街の騒々しさと煌びやかさから断絶された様に暗く細い其処に、瞬間月光が差し込んで、__殴られた頬を腫らしながら一人佇むその男の顔に走る引き攣った傷に目を惹かれずには居られなかった。)
おい、何してやがる。とっとと逃げろ阿呆。
(関わるつもり等毛頭なかった筈だが気が付けば声を掛けていて、均衡を保っていた何かが音を立てて崩れ行く奇妙な感覚に首を傾げつつ思考を掻き消して表情変えず歩み寄っている自分が信じられずにいた。)
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