鬼怒川組の、［ ヤクザ / 無登録指名制 ］

>56　依子

――――っ、
（行きつけのバーは隠れ家的名所で、酒や肴の味の良さは勿論客層が良いところをいっとう気に入っている。一晩の色を売る女の煩わしい客引きもなければ馬鹿騒ぎする迷惑な若者も居ない、今夜は久々に時間を取れたのだから一人で好きな酒を静かに楽しめる――そう思っていた。２つ隣の席に座った女性が大胆な注文をするものだから、思わずそちらを盗み見てしまった瞬間、横顔を一瞬見ただけでもそれが五代目のお嬢様だと気付いて。思わず息を呑み、財布から新品の万札を一枚テーブルに置き、マスターへは“お釣りは要らない”と目で告げて。そのまま足早にバーを去ろうと扉へ向かう途中、気付かぬ内に懐から一冊の革手帳をカタリと落としてしまい）


（ / 今日和、こちらこそお相手頂きありがとうございました！真正面から来られたら後退って逃げるような闇医者ですが、本日も時間のある限り宜しくお願い致します。）