訳アリ少女の不安な情緒（〆）

さ、さんって……。よ、呼び捨てでいいよ、同じ年なんだし……。

(唐突なさん付けに若干戸惑っては少し距離を感じてしまってそんなことを言って。
チラリと目の前を見ると、曇りのない表情で気軽に接してきてくれている彼女の姿。それは今まで初対面だった女子からは感じたことのない雰囲気。ああ、やっぱりこの子は俺のことを完全に女子だと感じて接してきてくれているのだろう。
実際見た目にはそうなのだが……もし俺が男だと知ったなら、その時はどんな表情をするのだろうか。
せっかくできそうになった友達。そんなことを打ち明けてまた離れられたら嫌だな、なんて。
このまま騙していくしかないのだろうか……、そんなことを考えていると、LINEの交換を提案されて。
新しいクラスメイトや友達ができたときの恒例行事。もちろんと、真っ黒の特に柄もない手帳型のケース、あまり女の子が選ばなさそうなそれの中に入ったスマホを取り出して開いたところでぎくりと身体を震わせる。

まずい……アイコンとか名前とか何も変えてない。

でもここで女の名前に変えたら、逆に俺がこうなったことをまだ知らない昔の友達にバレる。どうすれば……と数秒考え、とりあえず応急処置として名前を「かみや」に変える。
アイコンは……アニメの女キャラ。男っぽくも女っぽくもないものに変えたいけど……そんなの思いつかないし、探してる時間もない。
とりあえずこのままでも一応顔が映ってるわけでもないし……！
そう考えればまたドキドキと緊張しながらようやくLINEの友達検索画面を開いて)

え、えっと……こ、このダテだよなっ……！　い、今すぐ送る……！