匿名さん 2022-04-24 11:11:17 |
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(駆けつけたそこは、蜘蛛の子を散らしたように通行人の姿が失せ、煌々と輝くネオンがいっそ不気味な花道通り。ホストの顔がずらりと並ぶ看板の合間、闇に沈む細い路地からむわっと漂った異常な匂いに足を止め、〝現場〟にふたりで踏み込んでいく。案の定そこには血だまりと、茫然自失といった様子でしゃがんでいる風俗嬢。ひとまず無事な一般人は発見できた、彼女への対応は〝ワープ〟で安全地帯に転送できる相手に任せてしまえばいい。だが、他の怪我人はいったいどこに? そう考え、血だまりの痕を辿るように路地の先へと目をやった瞬間、気づいてしまった。室外機の向こうに横たわる、無数の注射器をどすどすと突き立てらたふたりのボーイの姿に。相手の横を大股ですり抜けて彼らのそばに屈みこみ、呼吸と脈を確認。どちらもかろうじて息があることにほんのひとかけらの安堵を得る。しかしを恐れたか、妙に必死な声音でこちらを牽制してくる背後の相手に、「……勝手?」と、低い声を吐き出した。──それは、すべてが滲んだ一言。〝無能な〟対魔特異課の首輪をつけられ引きずり回されることへの怒り、そうして使役しておきながら実力行使は制限されることへの怒り、そして背後にいる相手個人への、圧倒的な信頼のなさ。身を堕とした償いとしてデビルハンターになれと言っておきながら、今もどこかで奪われるかもしれない命を見過ごせというのか。拾えるものを拾うために足掻くことの、どこが身勝手だというのか。バディとは名ばかりの監視役、その後ろに潜む〝あの女〟の言いなりになれというのか。その憤怒は、路地の更に先から聞こえてきた女性の悲鳴で決定的なものとなった。ザッと音を立てて立ち上がる、手首の不自由さが緩んでいるのには先ほどから気がついていた。「このふたりも運べ。それと、恨むならマキマを恨め」そう背中越しに言い捨てると、相手の返事を待つことなく、血痕が続いている闇の先へと駆け出していき)
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