匿名さん 2022-04-24 11:11:17 |
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(千鳥足の男どもは、明らかに泥酔状態とわかる呂律の回らなさで相手を罵り、殴り合っていた。おまけにたちの悪いギャラリーも、下品な口笛や合いの手を入れて囃し立てる始末。うんざりしながら首を傾いで眺めていたその後ろからは、再び聞き馴染んだ声が。振り返ったすぐ後ろ、ネオンで淡く彩られた相手が、まっすぐな漆黒の瞳で入念に釘を刺してきた。「お座りしてろってか」と華奢な背に向けて唸るが、相手はもう聞いておらず。屑の極みのような連中にも変わらぬ丁寧な物腰で質問、しかしこのときばかりはそれも逆効果のようで。「──公安だぁあ!?」興奮中の男たち、そのなかの頭にネクタイを巻いたひとりが、派手に唾を飛ばしながら相手に突っかかった。先ほどまで喧嘩相手に向けていた敵意の矛先を、一気に相手へと切り替えたようだ。「俺ァ、公安ってェ、狗どもを見るとよォ、虫唾がァ、走るんだよォ!」おかしな抑揚でそう叫びながら振り回そうとした拳、それを相手の後ろからぬっと伸ばした腕で引っ掴むなり捻り上げ。「……おまえ、こういうの相手にした経験浅いだろ。」呆れたように相手を見下ろして言いながら、引き寄せた男の股間に強烈な膝を一発。途端に目を剥き、くの字になって沈む酔いどれ、沸き立つ観衆、ぎょっとしたように先ほどまでの喧嘩相手を見下ろす野郎ども。彼ら相手には冷たい視線での見下ろしで黙らせ、ギャラリーには鬱陶しそうに手をひらひらさせて「散れ散れ」と慣れた様子で命じ。右手で首の左側を軽く揉みながら、先ほどの牽制を早速無視したのを悪びれもせず己なりの見解を)
こういうのにはまともに取り合うな。こ俺たちの仕事は、どいつかひとりに少し痛い目を見せて場をおさめることだ。当人だって、どうせ明日にゃ憶えちゃいない。
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