匿名犯罪者 2022-04-11 23:45:27 |
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助かるよ。それじゃ、そこにあるパンをナイフで半分に。どこかにしまってある平皿も適当に出して、ここに置いといてくれ。
(ゆらりと傍らにやってきた少女の、まるで焚火で暖を取るような仕草。あの地下室で果たしてどれだけ『寒い』思いをしてきたのか。不要なはずの想像力を無言で押し流すように、彼女から視線を外し提案を受け入れる。よほど力加減を間違えなければ不慣れでも怪我はしないだろうと、渡したのはパン切りナイフ。彼女にそれを任せる間に茶葉を蒸らし、熱したフライパンの上で厚切りの肉も焼いていく。
やがて出来上がった料理は、脇にちぎった葉野菜を添えただけの実にシンプルなベーコンサンドイッチだ。合わせて淹れるのは、それに見合わぬ高級のキームン茶。花のような香しい匂いが漂うあたり市販のそれではないはずで、これはいい思いをしたなと薄く笑みながら、室温に戻したポット入りのミルクを向かいのソファーに腰かけるフレデリカの方に押しやり。「好きなぶんだけ先入れしてごらん」と、今まであまり与えられてこなかったであろう嗜好の上での『選択肢』を委ねながら、先に温かな夕食にかぶりついて。)
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