匿名犯罪者 2022-04-11 23:45:27 |
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( / 素敵なご提案、ありがとうございます…!こちらも客人であるアダム様をこの地下室で迎え続けるには不適切、とフレデリカが思い至った流れで上階へと向かい、そこからさらに互いの心中を明かして進展させていきたいと考えておりましたので、是非そちらの流れで展開させていただければと思います…! 蹴可 )
アダム、アダムというのね。素敵。聖書に出てくる、始まりのお方と同じお名前だわ。そう、お父様とお母様はとてもご機嫌なのね。わたしのことを先生以外の誰かに話してくださるなんて、とてもとても珍しいことだもの。
( 舌で転がすように、彼の名前を反芻するかの如く繰り返して。まだ拘束具に縛られなかった頃、病棟で与えられた聖書を読み耽っていた記憶を思い出す。蛇に唆された片割れとともに、林檎を口にして追放された彼の人を連想させる名は、偶然ながらも馴染み深いおかげで、少女の緊張を無意識に和らげた。そして、その後に両親が彼に己の存在を明かしたと聞いて、錆びた機械のように固まっていた口角を初めて上げて。少なくとも、両親自ら明かしてくれたのならば怒られることはないはずだ。彼と話した時の両親はまだ、ここを出ていった時と変わらず優しいままだという情報が胸中に喜びを生じさせた。 )
わたしはフレデリカ、フレデリカ・ローレンスよ。わたしのせいでアダムが叱られてしまうの?それはいけないことだわ。直接お許しをもらわないで上へあがるなんて初めてだけれど……、アダムにそうおっしゃったのならきっと大丈夫なのね。あなた様が叱られないように、お父様とお母様のご機嫌を損ねないために、いきましょう。
( 矢継ぎ早に掛けられる言葉に、彼の目論見通り考える余裕はなく。ただ、己の行動次第で何も悪いことをしていない彼が叱られてしまうことに強い抵抗感を覚え、両親から申し付けられているとの彼の言い分をそのまま鵜呑みにして頷き。自宅、病棟問わず殺風景な一室に閉じ込められている期間があまりにも長かったが故に、地下室の外が異世界のように思えて咄嗟の躊躇いを見せたのは一瞬で、彼の手にそっと己の手を重ねると、そのまま握り、手を繋いで。素足をぺたりと冷たい床につけて立ち上がり。鍵で閉ざされ、出たくても出ることのできなかった部屋。不安に混じって首を擡げる僅かな高揚は、誘導された自由意志決定から来るものか。まだ己の本心を、そこに疼く狂気を知らぬ彼女は、目の前の頼れる存在──彼の手を離すことなく握ったまま、上階へとそっと歩き出して。 )
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