μ 2022-03-04 21:32:27 ID:09beb1e04 |
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>ウェイン
わたしが最後にここを訪れてから、実に10年近い月日が流れていた。
体中に広がっていたうきうきはようやく落ち着きを取り戻し、今はどちらかと言うとどきどきしている。まるで友人の家を訪ねるような気軽さで来てしまったけれど、ご迷惑ではなかっただろうか? ……そういった不安が芽を出し始めたが、ここまで来てお顔を見ずに帰るという選択肢はさすがになかった。第一、先生のことだからきっとわたしが訪ねてくることなんてもうご存知でいらっしゃるはずだ。この扉を叩いたら、あたたかく迎え入れてくださるのだろう。あの日々と何一つ変わらない、優しい温度の先生が。
かつてより幾分大人びたノックで、中の様子を伺ってすぐのこと。どうぞ、と一つ声がした。先生だ、すぐにわかった。嬉しくなったわたしは「失礼いたします!」と元気よく返事をし……だがその明るい声とは裏腹に、少しの緊張を滲ませながらゆっくりと扉を開いた。
鍛冶場は茶色とグレーで構成されていて、こじんまりとした円形をしている。昔とおんなじだ。壁にさまざまな鍛冶道具が釣り下がっていて、恩師はその中央に腰を掛けていた。前より髭が白くなられた気がしたが、その他はわたしの知っている先生のままだ。
わたしはこの再会にたまらなくなってしまって、足早に先生の前へ歩み出た。
「先生、本当にお久しぶりです! 今日この近くで本の納品の仕事がありまして、またとない機会だと思いご挨拶に伺いました。……名乗り遅れてごめんなさい。もう10年近く前にギルドを卒業した、ヒース・マグパイです」
先生が正面の椅子に座るよう促してくださったので、わたしはぱっと腰を下ろした。まるで子供に戻ったみたいだ。実際、すでに気持ちも言動もいくつか若返っているように思う。先生の前で、大人の振る舞いをすることが多少気恥ずかしかったのかもしれない。恩師は目を細くしてわたしを見て、それがどうにもくすぐったかった。
それからは互いの時を遡るようにして、丁寧に近況を報告し合った。恐らくわたしはずっと笑顔であったし、先生も優しい表情をされていた。わたしの仕事の話に一区切りつき、「またロトンに、そして先生のもとにやって来られた巡り合わせに感謝しています」と……現状に礼を述べたあとのこと。それを聞いた先生が、やけにゆっくりと口を開いた。
『きみにこれを伝えるかどうか、正直今でも迷っておる。じゃが、これも何かの巡り合わせのように思うのじゃ──』やけに慎重な前置きをして、とうとう視線を落とすから……わたしもつられて目を逸らした。煤けた床をなぞるように見る。頭の芯が冷たい。なんだか怖いことが起こる予感がして、それがすごく嫌だった……。
少しの沈黙が流れたあと、先生はわたしを真っ直ぐに見つめた。わたしも顔を上げざるを得なくて、恐る恐る見つめ返す。喉がきゅっと縮まって、心臓が不安がっていた。先生の目が、わたしを出迎えてくださったときのものとは全く別物だった。
嫌な汗が背中を伝う。良くないことを言われると思った。わたしの心を強く揺さぶるような何か……。それが今、無情にも投げかけられようとしている。
「ヒース。きみは現在のルヴィクについて……何か"悪い噂"を聞いたことはないかの?」
それだけ言って、先生はまた言葉を詰まらせた。わたしは声さえ出なかった。
(/素敵なプロフィールと物語の始まりをありがとうございます…!イレイズが本当に好みど真ん中でひっくり返りました。何度も何度も読ませていただいております。彼の言葉を聞ける日が心より楽しみです…!
ウェイン先生も想像通りの人物像でとても嬉しいです。見た目も好きです!
前半部分に登場したNPCも、今後どんなふうに関わってくるのか今から本当に楽しみになりました。それと筆が乗って始まりの部分を少し描写してしまったのですが、こちらはスルーで大丈夫です。次レスにお返事を投稿いたしますので、そちらのご確認をお願いいたします。
質問、ご指摘などは遠慮なくしていただけると幸いです。文体やロールプレイなど相性不安の面は大丈夫でしょうか…?問題ないようであれば、これからよろしくお願いいたします…!)
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