匿名さん 2022-02-27 12:39:30 |
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【 オーエン 】
ふふ、やった。とれたての内臓を裏ごしして、どろどろに煮詰めたような甘い瓶取ってくる。
( ポカンと無防備に固まっているニンゲンを見上げる両眼はあいも変わらず冷めており、言外で要求を拒否することは許さないと顕著に告げていた。寸秒して晶の石化が解けると、雨雲の切れ目から晴れ間が差し込むように真一文字だったオーエンの口元が嬉しそうに弧を描いて。ニッコリと、ともすれば月の傷痕を彷彿とさせる毒気のない笑み。甘いもの一つで手の平を返す様は案外くみし易いと取るか、はたまた移ろいやすい魔法使いの性と取るか。とにかく好物は気難しい魔法使いの警戒心をほんの少しだけ解き。近所の野良猫でも見守るような温かい眼差しに気付くこと無く、晶の傍から離れれば冷蔵庫の扉を開けて。キッチンの主たる人物の性格がよく反映された整理が行き届いたそこを台無しにするような手つきで中を探り取り出したのはジャムの瓶。苺やりんご、ブルーベリーにマーマレード…片っ端から取り出したものを円状に並べていきテーブルはちょっとしたジャムパーティと化していた。小窓から差し込み瓶を照らす淡い光はジャムの透き通った色合いを引き立てて、より美味しそうに見える。オーエンは満足げに目を細めた後、再び賢者のほうヘ視線を戻して言った。 )
ジャム入れていいでしょ?砂糖もたっぷり入れたらきっと凄く甘くなって美味しくなる。すっきりした味の紅茶と一緒に食べたいな。
【 ネロ・ターナー 】
…だろうな。皆が皆、魔法使いってわけじゃなさそうだけど用心して進もう。
( 箒から降り薄暗い路地裏を抜けるとそこには市場にあった華やかな活気や贅とはまるで無縁の寂れ果てた住宅地が広がっていた。閑散と言えば聞こえがいいが、頭上に広がる晴天なんてお構いなしに辺り一帯にはどんよりとした陰鬱な空気が蟠を巻いて滞留している。整備されていないガタガタの道を進みながら、少年を捕まえた後のことを考える。盗った物はちゃんと返さなくてはいけないとしてもあの痛ましい横顔を思い出すとどうしても胸が痛んで何か出来ることは無いのか──と、シノも彼のことを考えていたようで途切れた声にネロは弱ったように失笑を返して。答えの出ない自問を一度打ち切り少年を探すべく周囲に目を配り。身なりの整った二人組は良くも悪くも目を惹くようで、よそ者に向ける視線は人によって様々。大半は好奇心や警戒といったものが殆どだが、中には建物などの影に隠れて金目の物はないか品定めするような眼差しもチラホラ散見される。ミイラ取りがミイラになる展開は避けたい為、シノに軽く注意喚起すると持っていた荷物を抱え直し。)
教えてくれるか分からないけどさ、とりあえず犯人のこと色々聞いてみようぜ。
( 進もうと言ったものの闇雲にうろついても仕方がない。市場街では至るところに貼ってあった犯人の手配書を見掛けないこと懸念点とはいえ、一部から向けられる敵意のない眼差しにネロは一縷の望みを賭けることに。記憶を頼りに魔法で瞬時に手配書を複製してみせればシノの前に差し出して。 )
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