匿名さん 2022-02-27 12:39:30 |
通報 |
[ オーエン ]
…何その意外そうな顔、部屋にこもりっぱなしなのも退屈だろ。
( 魔法使いと共に壊れかけた世界を救う救世主、賢者様。崇高かつ大層な肩書きとは裏腹に強大な力を有しているわけでも無ければ屈強な戦士でも無い、彼は街の人間と大差ない脆弱な存在だ。現に今も仮初の命を吹き込まれた食器に翻弄されており、当惑しながら暇潰しに付き合わされている姿は人の不幸を蜜の味とするオーエンの目を愉しませた。やがて忙しなくあちこちを撫でていた瞳が部屋の出入り口に向けられると視線がかち合い。狐につままれたような顔をしながらもクッキー泥棒を尋問するでもなく、律儀に挨拶を返してくるところに彼の人柄が垣間見え。笑みを象っていた唇から一瞬感情が消えるがキッチンに入る頃には、より強くなったバニラエッセンスの甘くまろやかな香りに機嫌は元通りに。その場で固まっている相手を気にも留めず部屋の中央に備え付けられたテーブルまでやってくると、半分自分の物にした心持ちで平皿を置き。見た目や匂いからしてよもや失敗作だとは夢にも思わず骨張った指先で1つクッキーをつまめばとびっきりの猫撫で声で言った。 )
ねえ、賢者様。さっき読んでた本に面白い呪術が載ってたんだ、オズに掛ける前に君で試してみてもいい?それかこのクッキー全部僕にちょうだい。
[ ネロ・ターナー ]
今日の晩飯の材料とそれからほら、もうすぐ婿さんの誕生日だろ。流石に花嫁さんはプレゼント出来ねえからサヴァランでも作ろうかと思ってさ。
( ガーネットの瞳が見つめる瓶の中の物はどちらともそう珍しい物でもなく、シノの好物であるレモンパイとも関わりのないスパイス。17年の人生の一端しかまだ知らないネロが在りし日の思い出と秘められた従者の忠義心に気付くことは無い。ただ、とても大切なものを見るような優しい眼差しは見覚えがあり、世界は人で溢れていれどもシノがそのような目を向ける対象はそう多くはない。恐らく主人のことを考えていたのだろうと推測を立てれば急かすように手招いていた腕を降ろし、それからレジスターを軽く顎で指し示すことで買い出しの戦利品を教えて。代金の計算と並行して大きな紙袋のなかに今晩の晩食に出すグラタンとスープの材料、そしてケーキの盛り付けに使うフルーツが女性の手によって手際よく詰め込まれていく。服の懐から財布を取り出しつつふと調味料コーナーを一瞥すると気に入ったのかシノはまだそこに居た。思わず吹き出しそうになった笑いを抑えるように手の甲で口元を隠しつつ、 )
オレガノの方は肉料理に使うやつでターメリックは…パエリアとかターメリックライスって食ったことねえ?それに使うんだけど。
トピック検索 |