匿名さん 2022-02-27 12:39:30 |
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▼晶
…(昼下がり。人も動物も虫も草木も、何もかもが眠り込んでしまったような静かな午後のこと。賢者こと真木晶はキッチンで、あるレシピに向かって言葉にもならない声を出しながら、首を捻っていた。晶は数分前にできあがったクッキーを平皿から一枚口に入れると、その出来栄えに眉を寄せた。塩辛くもないが特段スイーツとして特有の甘さを持つでもなく、それはやはり、クッキーと呼ぶには些か味気なかった。晶はもう一度レシピにある材料欄に視線を移し、まじまじと見つめる。前の賢者が残していったいかにも社会人の男が書き残しそうな文字とレシピの隣に置いた砂糖の袋を、晶の視線が交互に行き交った。そこで、ふと、「砂糖」と記された文字の上に薄く消えかかった何かがあることに気が付く。よくよく目を凝らすと、その何かは確かに晶の見覚えのある文字列であり、おそらくこれが今回、クッキー作りにおいて失敗してしまった要因なのだということは、鈍い晶にも容易に理解することができた。砂糖の種類を間違えていたのだ。種類が違えば糖度も違うだろう。その事実に思わず乾いた笑いを零そうと晶の口許が僅かに緩んだその時、砂糖の入った袋とは反対に置いていた例の皿が音もなく浮き上がっていく。晶はぎょっとして、不規則に、だが、緩やかに動くそれに、手を伸ばした。)
▼シノ
…(中央の国に陽光に温められた午後の空気が流れ込む時間帯。昼食を済ませた魔法舎を出たネロとシノは、夕飯の買い出しに少し遠くの街にその足を伸ばしていた。人目につかない場所で各々、箒から降りて地面に足をつける。人々の靴音に誘われて通りへ出ると、賑やかな空気が二人を出迎えた。行き交う人々に混ざりながら、シノは、前に立つネロの後ろ姿をはぐれないように何度も確認する。精肉店の前では気丈そうな女性が人好きのする声を出して、客引きをしており、その隣に構えた八百屋では中年の女性がせっせと無くなった商品棚に新しい野菜を並べている。向かいにある魚屋では、どこか気前のよさそうな男性が、笊に入った魚を大きな葉と紙でできた包みに慣れた手つきで入れ替え、親子で買い物に来たらしい客に渡していた。どの店も雰囲気の良い賑わいを見せていた。最初にネロが入った店はそのどれでもなかったが、ここでもやはり優しそうな笑みを口許に湛えた女性が店番をしていた。シノは棚に並んでいる瓶詰の粉末を手に取ると、訝しげに瓶の表面に着いた紙を見る。「ターメリック」。シノはその隣の瓶も手に取った。「オレガノ」。料理ができないシノには何のことだかさっぱり分からなかったが、それでも、その字面が持つ雰囲気を気に入ったようで、他の棚にもべたべた触っていた。)
(/東の魔法使いペアはロルにて少々進行させてしまいましたが、もし主様がもう少し前の段階から進めていきたい場合には遠慮なさらず、仰っていただければ、修正したものをこちらでご用意致します。また、ロルが少し長くなってしまい申し訳ありません。レスは200より短くても大丈夫です。
そして、こちらからも改めて挨拶させてください。拙い部分などあるかとは思いますが、改めてよろしくお願い致します。)
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