保健室の先生 2022-02-13 22:37:37 |
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( 遠くから乱暴で荒々しいドタドタと響き渡る足音に直ぐに彼だと気付く。出会った頃は毎日のように痛々しい生傷を負った彼に恐怖心を抱いていたが、一年も経つとその非日常な出来事も当たり前のように感じる。寧ろ彼が保健室へ来ない日があることが非日常に感じてしまう程には感覚が狂ってきたと思う。そんな事を思いながら乱暴に開けられた扉へと視線を遣ると、其処には見慣れた姿の彼が立っていて。 )
……十矢くん、この前手当した傷だってまだ治ってないんだからもう喧嘩はダメ。
( 何回伝えたか分からないその言葉に意味なんて無いのは百も承知だが、頬を蔦う真っ赤なソレに伝えずにはいられなかった。慣れた手付きで消毒とガーゼを取り出し処置を施そうと手を伸ばせば小刻みに震える自身の手に気付く。この一年間何度も繰り返し行ってきたその行為にも、勝ってしまうその症状に顔が強ばる。心の中で何度も何度も寒さの所為だと言い聞かせながら、そっと傷口へと触れる。 )
ごめんね、少し痛いけど我慢してね。
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