名無しさん 2022-02-07 20:13:11 |
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──何?
(つらりつらりと述べられる言葉は人質にしては些か否、とても普通とは掛け離れていて今までの人質は身分など関係なく訪れた非日常に適応など出来るはずもなく気が狂ったように泣け叫び無様にも慈悲を乞い、虚しく散っていった命ばかり。身代金請求諸々は他のメンバーに任せいざとなった場合を任されているのが己であった。命令通りに見張りとその時が万が一きたら躊躇うことなくこの刀を、今まで奪ってきた命と同じく光を奪わなくてはいけない。命の綱渡りをしていることを知らない訳ではないだろうに、やけに余裕がある相手の言動が心の奥に引っかかり。つけ離した言葉も無意味に次から次へと届く言葉は、自分の命など惜しくないようなうんざりともとれるそれで傍から見ればこの状況に諦めたとも思える言葉でもあるが、僅かに眉間へ皺を寄せつつ話しても無駄かと思ったのか背を向けて再び刀を壁に掛けて本の続きでも読もうかと椅子に腰掛けようと少しばかり身をかがめた時、鼓膜へと届いたそれにはた、と動きを止めて。意味が理解出来なかった訳ではない、ただ何故今このタイミングでしかも出会うなんて綺麗な言葉で片付けられるものではないがあくまで善と悪の立場。顔を合わせるのも今日が初めて、声を交わしたのだってつい先程の事。なのに何故そんな相手に恋慕を抱くのか、泣き落としならぬ別の方法と言うわけか。深く刻まれた眉間の皺、振り返りつつ問い掛け直しては本に伸びかけた手を引っ込めて再び刀を持つと相手へ向き直り 「 お前、命惜しさに──……、 」 何かを言いかけた所で口を噤み。何やら慌ただしい声が上の方から聞こえているのに気がつくと視線を向けつつ一度相手を一瞥すれば、腰掛けていた椅子に戻りドカッと腰を下ろせば刀を傍らに読んでいた本は足元に置いて )
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