イニール 2022-01-26 01:00:51 ID:0ee18fced |
通報 |
>イールトルート
(/ すみませんものすごく今更なんですけど今の時刻ってどれくらいですか?)
「神隠し、ね。」と、オウム返し気味に彼は相槌を打った。
おまけにもう一度心の中で「神隠しねぇ」とオウム返し。
自身の状況にどこか合点がいったように、同時にどこか釈然としない様子で言葉を反芻し続けるが、くり抜かれたカボチャのような顔面にそんな細かな感情は浮き上がらない。
「神域か。頂上からの絶景に興味はあるが、きっと僕は身分からして立ち入れないだろうね。
もし入ったとしても即全身が溶けるなり焼かれるなりして、いつしか麓で新たな神隠し事件が騒がれるってオチさ。グハハッ。」
考えを切り替えるように彼はおどけて言う。低い嬌声が弾けると、呼応して口内の炎がゴウッと激しく唸った。
火が膨れ上がり、真っ赤な先端が唇を押しのけチロチロと口周りを舐めたがそれも一瞬の出来事。炎はすぐに口腔へと引っ込んだ。
そうこう話しているうちに男の部屋へとたどり着いた。この世界で彼が初めて持った、彼の部屋だ。
不動産屋から受け取ったアイテムその2、鍵を差し込みながらピアノマンは言う。
「不動産屋の話だと備え付きのしょぼいと椅子と机くらいならあるそうだ。運が良ければね。」
ガチャリと音が鳴り、扉が開く。
「そして天使様が踏み入れてくださるのだから、山にいる神様だってそれくらいのささやかな奇跡の一つや二つ起こしてくれるはずだろう。」
本気か単なる冗談か。
扉を支えながら男は「さ、どうぞ」と招き入れる。
トピック検索 |