28063募集主 2022-01-12 17:11:13 ID:ec3fcc4f4 |
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……ん、おおきに。よきこと、ととさんが教えてくれよるからに、あっ、魚、もう焼けとう?
(薬草が擦り潰された独特の匂いが掠めつつ微かに手当が終わると折角塗ったばかりの薬が取れない程度に少し足を崩して床の間に座り直し、指と指の間に出来上がったものを丸めながらも耳にした言葉は古今東西アテにするにはあんまり信用ならなさ溢れる常套句だと、たとえ自らの残る記憶が乏しかろうとも察するには充分で。髪の毛に触れる掌は変わらず心地良く幾度も覚え慣れたかのように自分からも頭を傾けて僅かに表情が柔く緩まる傍ら、視界に入ったのは囲炉裏の傍で串に見立てた木の枝に貫かれた魚。囲炉裏の灰殻の上、赤々とした火に焼かれてそろそろちょうど良い焼け具合になっているように思われる魚の状態を見て取ると、意識の対象を魚の方へ向けさせようと声を掛けながらも視線は度々自分の手が届く距離から若干遠ざかってしまった煙管の方へ向いていて、隙あらばもう今の内から葉を差し替えてしまおうと蓬の葉を丸めた布ハギレを離さず手にしたまま静かな攻防戦を仕掛けて)
ほら、ほら。早ぅ取っとりんと。
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