匿名のなめ 2021-12-25 22:01:06 |
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いつか、幼い頃の風景がフィルム映画のように不鮮明に、しかしながら鮮明に思い出される。
「では、みんなで空をかいてみましょう」
当たり前のように青や赤や緑のクレヨンを手に取り、心のゆくままに色を塗りつけるおともだち。_____理解できなかった。
「……ちゃん、どうしたの?」
それでも、幼き日のわたしは蔓延るマジョリティや透明な圧力に立ち向かっていた。本当に、どうしてそんなに熱心になれたのか今では分からない。ただ、教師と呼ばれる大人の少し眉を下げた表情はよく覚えている。ああ、いや、彼女に罪はないのだろう…今思うに。……しかしあの目は忘れられない。“目は口よりものを言う”という言葉はある意味真理だ。彼女は語っていた。_____理解できない、と。
「何、コレ?」
棄てられた。知っていた。知っていながらその身に裂傷を作った。わたしにとっての空は、そらが“空”と書くように空虚なものだった。わたしの持ち帰った空は透明だった。
それは記憶の奥底に収納されていたモノ。無意識に避けていたモノ。されど、かく念ずるほどにその長いテープが引き出されていく。どうして、今更。
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(丁度良い空調と定期的な発進停止を繰り返すとあるバスの車内。ゆりかごの如く快適、ではないが同じく誘眠作用があるかもしれない。呼吸の合間を縫って目覚めの口付けをしたのは、車掌の低く静かな停車案内だった。こくり、こくりと微睡みつつ端末を弄ると開いたままにしていた交通案内の検索結果が一面に。ん~…、成程?次で降りる……と、二度寝をしている場合ではない。シートから身を起こし ぐぐっと背伸びをして体にも起床を促す。その後身嗜みやら環境を整えていたら、あっという間に到着してしまった。降りるのは自分だけなのだろうか、運転手に軽く感謝を告げると自分を迎えるこの街に向けてはじめの第一歩!小さな跳躍による黒髪の滑らかなうねり、スカートの裾から伸びる透き通るような肌のコントラストが美しい。)
__って、誰かがわたしをパパラッチしていたら良かったのに。きっと傑作だったわ。
(ふわりと着地する。ちなみに本日のコーディネートはワインレッドのフリル襟ブラウスに黒のレーススカート。腰にコルセット。左手薬指に少し大きめのハートのモチーフがついたリング、右手親指に幅広のリング、小指に透明な石の入ったリング。いずれもシルバー。髪を耳下で二つ結びにしてリボンで纏めているため、少し幼く見える。一応これから世話になるということで、手持ちの洋服たちの中でもお気に入りのものを選んできたつもり。う~ん、やっぱり可愛い。世界は総じてわたしを愛するべきだけれど、秘された花というのもまた甘美。よってその答えは、対人関係の少なさから先ずギャランテの紹介した人物の反応に委ねられた。さて、トランクからキャリーケースを二つポーターから受け取り、バスを気持ち見送ってから新しい住まいへと歩き始め暫く。ピンの位置に辿り着いては少し観察して。ホテル住まいであった故に大抵の住居には家庭的な雰囲気というか近寄りづらさを感じてしまうが、上からの指示とあらば意を唱えることもできまい。洋服のポケットの中の更に巾着の中にあるスペルキーを取り出して静かに鍵を回す。今は家の鍵まで網羅して管理されてるのね、なんて僅かな憐憫。そして自分もその管理のもとにとうとう入り込む。部屋の中には静寂だけ。「お邪魔…します……」控えめに挨拶をするも返事はなく、やがて端末のライト機能を使って探索を始める始末。それにも飽きて結果、一つのキャリーケースからノートPCを取り出し家主について情報を確認している。電気もつけず、小さな発光と液晶が闇に浮いているように見えてどこか気味が悪い。)
…アレク・ガルシア……スペイン系かしら…、31歳、シカリオ…、
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(/初回失礼しました…!書いているうちに楽しくなり、少し長くなってしまいました。普段は大体300字~なので、お気になさらず綴っていただければと思います。よろしくお願いします*)
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