政府職員 2021-12-18 01:03:44 |
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(木枯らしが疾うに吹き終えた冬の陽射しは柔く、空の青さは心地良いほど透明だ。有り体な本丸とさして変わらぬ佇まいの屋敷を目前に、未だ白く濁らぬ息を緩々と吐き出した。雅とは言い難い本丸の中には何とも分からぬ花が咲き、壁に伝い伸びる蔦は思うがまま。その有り様こそ、此の本丸が斯様に永らく放置された証だろうと頭の片隅で思案しつ、玄関口へ足を踏み入れて。__主を失いながらも顕現し続ける刀が居ると聞いたのは、つい先日の事だった。最早霊力の供給すら覚束ない本丸にたった一振りだけ残っている、その刀を何とかして欲しい。上司のそのまた上からやってきた甚く曖昧な命令を拒否権も無く受け、一も二もなくこの寂れた本丸へやってくる事となった。既に行方不明と断定された審神者が元いた本丸など早く取り壊してしまいたいに違いないが、刀解も政府の刀として働く事も、他の本丸に引き継ぐ事さえ拒むらしく。どの様に交渉したものか。溜息の一つでも出してしまいそうな口許を一度指先で覆い隠してから、己の佇まいを一度正し。返事が来なければ中に踏み込んでしまおう。自分自身と決め事を交わし、すうと息を吸い込んでは)
__薬研藤四郎。度々の訪問失礼するが、そろそろ君にも今後の事を決めて頂きたい。霊力の供給がが途絶えなお、現世に留まる程の優秀な一振りと聞く。此方としても手荒な真似はしたくないんだ。話し合いでの解決を望んでいる。…顔を見せてはくれないか。
(/すみません、誤字がありましたので再度投下させてください!)
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