使用人A 2021-11-08 23:48:34 |
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>イヴァン
( 暗い中でもしっかりと影が頭上から降り、差し出された手から手首、腕、首筋を辿ってその暗い中で猫のように光ってすら見える瞳を捉え。使用人に異常に優しく、否、身分が下の者に無条件に優しい貴族は珍しい。主人とは形が違えど、少なくともアンダークラスを見下すような男でないことは流石に分かってきた。その表情が抜け落ちたような一瞬の隙ですら、恐らくはこの男の本性なのだろう。本当に『ただの慈善家の男』なのだとして、感じる違和感は何なのだろうか。元に戻った笑みを見上げたまま、片腕にジャケットを移し手袋が外されたままの手を取る様に触れ、
「・・・ボークラーク様がとてもお優しくて、社交界では多くの方にお声を掛けられていらっしゃって、あるいは女性からは黄色く、男性からは羨望の眼差しを向けられていることは先程ご教示いただきましたけれど、」
それはもう嫌という程見せられたが。あの場で別のターゲットを追うはずが、物の見事に会場の外にいるのだから。しかし、使用人と共に花形貴族が会場から消えたとなれば話題はそちらで持ち切りに違いない。形は違えど、少なくともターゲットの意識も含め会場中の視線を独り占め出来ているのだから主人もきっと許してくれるはず。膝を折ったまま、その手をそっと引くように身を寄せると自身の頬へと導くように、
「表の・・・優しいボークラーク様ではなく、他には見せない裏のお顔を見たいと思うのは贅沢でしょうか」
ここに来てふと思い出す。ああそうだ、ボークラーク家といえば何人かが亡くなっていて・・・不審死だと疑う声もあったのではなかったか、それを言ったのは主人だっただろうか?ぴたりと思考するように動きを止めて思い出すように数度瞼を落とす。急いで思い出してしまいたいのに、焦れば焦るほど思考に霧がかかるようで、 )
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