使用人A 2021-11-08 23:48:34 |
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>イヴァン
( 怪しまれることは想定内、寧ろ怪しんでコチラに近寄ってきたところで相手のしっぽを掴んでしまえばそれまでのこと・・・だが、合間に見えた相手の顔は余裕ぶったそれから動くことは無い。深追いもしない、ただ不特定多数の女性から人気がある、少し冷たく意地の悪い男・・・本当にそれだけなのだろうか?聞こえた感謝の言葉に少しだけ驚いて、それはもちろん貴族が使用人に礼を言うわけがないと分かりきっていたからに違いないが、何よりも少々重量のある毛布に触れようとしていたからだろう、伸びてきたしなやかで白い手と近付いた気配に反応が遅れ。
「・・・ボークラーク様のお屋敷に踏み入っては、絨毯が汚れてしまうことでしょう。触れればお手が汚れますよ」
咄嗟に振り払うように後退りをすれば、毛布が力なく棚から垂れて床に影を作る。武器を構えなかった自分自身を褒めつつも・・・これは悪手だと判断した。安くみすぼらしい酒屋であれば日常茶飯事であるはずの行動に過剰に反応する理由がないはず。むしろ、どちらかといえばまだ白寄りだと考えられる相手を邪険に扱う理由もなく、擦り寄るべきなのは分かっている、が、
「・・・お召し物を。『赤ワインで汚れている』でしょう、ボークラーク様?」
どうしてこういう時に限って、あれだけ見せられている資料の中からイヴァン・ボークラークの名前を思い出せないのか。焦れば焦るほど、この男に嘘をつくことが怖くなってくる・・・当初のプランでは、この男に捕まること自体が組まれていないのだから。触れた手が火傷したように熱く感じて、握り締めるように胸元に引き寄せ、野良猫が唸るように男の月のような瞳を見上げ )
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