使用人A 2021-11-08 23:48:34 |
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>セオドア
(彼女の回答は、少し意外であった。ロンドン郊外の小さな酒場から呼ぶか。どちらにしても、彼女へ聞いたところで、詳しくは教えてくれないだろう。単なる興味で、何処まで足を踏み入れるべきかは、考え直す必要がありそうだが、彼女の言い分は、少し引っかかった。喉の奥に小骨が刺さったような感覚。それとも、ボークラーク家の次期当主にまで、せっかく上り詰めたのだから、少しは知っておくべきなのだろうか。薄暗い部屋の中で、テトの髪は妖艶に月光を反射している。ニコリと笑顔を絶やさずに
「その割に中々、優秀なんだね。ああ、君を馬鹿にしている訳ではないよ。是非、それはうちの屋敷に来て欲しいものだね。」
そう冗談を言ってみる。勿論、そんなことする筈がない。部外者を屋敷に入れる。しかも、彼女のように頭のキレる子は、ボークラーク家の裏を暴いてしまう恐れがある。毛布へ手を伸ばしているのが見えると、一言
「そうか、ありがとう。」
お礼を言う。使用人に礼を言うのは間違っていると、上の兄2人はよく話していた。家族として生きる他人。彼らがまんまと自分の策略に嵌り、死んだ時のことを考えていたが、表情に現れては行けないと、すぐ考えを改める。どうせなら、もう少しこの子(テト)を揶揄ってやろうと、棚へ伸ばす手へ静かに触れると、笑みを浮かべ)
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