使用人A 2021-11-08 23:48:34 |
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>イヴァン
( まじまじと勤勉に観察をするように注がれる視線は自身が宝飾品にでもなったかのようで不快だ。よくもまあ、貴族というものは着飾って囃し立てられ見られることに慣れているものだと・・・不快感の原因でもあるこの男は何故こうも『ただの使用人』に微笑むのか。その理由を考えるように数度まばたきをすれば、派手な身なりの女性が派手に躓く。手を差し伸べた王子様のような彼に嬉々として擦り寄ろうとするレディを捨て置くようにこちらへ向き直った姿を見れば安易に想像がついたのは・・・恐らくは理由の一端は彼女たちにあるのだろうということ。つまりは、使用人はただの逃げ道に違いない、この場の使用人は主人たちに連れられて主催者の手伝いをしている者も多いのだから『主人は誰か』は今は気に止めていない。
「失礼をいたしました、女性の扱いはもちろんのことワインにもお詳しくておられるのですね。それでは、わたくしのことはテオとお呼びくださいませ・・・イヴァン様」
それならば、こちらに向けられる尖った視線が酷く心地悪いがこの際早く解放してもらうことを第一としよう。非礼を詫びるように片膝を折り、本名ではなく彼同様に呼び名を口にしてみせる。ここは貴族の社交場、使用人に人権などあるはずも無く、彼の一声で己など簡単にこの場からどこへでも連れ出せてしまうのだから下手に出ておいて損は無い。周りからすれば、何か失礼を詫びる使用人と咎める貴族にしか見えないに違いない・・・言の葉を拾い上げていなければ、だが。ここで彼女たちのように媚びを売って見せれば、より効果的に飽きてくれたに違いないが、そんなことをすれば主人らの評判に関わってしまうのだからいた仕方ないというものだ。 )
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