使用人A 2021-11-08 23:48:34 |
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>イヴァン
( 密やかに鼓膜を揺らす弦楽器の音、下品な笑い声、囀りにも似た悪口と衣擦れの音、相手の懐に潜り込もうとする意図が見え透いた嬌声。まったく、主人の命令でさえなければ、こんな場所に好んで足など向けやしないのに。こちらに注がれる視線からしてもこの男の社交界での人気はかなりのものなのだろうが、相手に後暗い噂、あるいはこちらの利用価値に繋がるような魅力がない限りは関わる理由もない・・・そう思っていたというのに。不自然なく繋がれた会話のリレーに少しだけ動揺を顕にして目が泳ぐ。ワインはきっと貧民街の子供の血と涙と同じ・・・そのワインを慣れた様子で、皮肉に嘆いて見せた口へと運ぶ姿に嫌悪感すら抱いたのは貴族を快く思っていないが故だろうか。いつだって狂った世界で価値があるのは、貧民街の子供と女なのだから、この貴族の男には遠い世界に違いない。
「シュナンと申します、ボークラーク様」
・・・本名はダメだ、男性名の女性など限られているし主人に迷惑はかけられない。咄嗟に目にしたワインのラベルから、思い付いたブドウの産地の一部を口にしては一歩身を引く。使用人が貴族に絡まれるなどご婦人方からしてみれば気分は良くない上に、他の参加者からしてみればさぞ良い見物だろう。目立ちたくはないと思えば思うほど、周りの視線が刺さるようで気分が悪い )
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