Secret murder

story

ガス燈照らす石畳 走り去る辻馬車の車輪の音
安物の革靴 捨てられた煙草の吸殻
売春宿から香るアヘンの臭い
世間を騒がす汚い事件

｢実につまらん｣

路地裏の奥の奥 古びた金色のドアノブが目に入るだろうか
豪奢な作りのそのドアは おおよそ路地裏にはそぐわない事だろう
そのドアの隣に並んでいるのは 黒いドアノブのついた古びたドア
こちらはある種馴染んで見える

どちらも同じ主の元に繋がっていると言うが
金色の扉から入ればそこは天国で
黒色の扉から入れば地獄だと専らの噂だ

金色の扉の向こうには端正な見た目の少年がいて
黒色の扉の向こうには悪魔のような少年がいると

｢実に滑稽だ｣

金色の扉に導かれるのは 悩みを抱えた人々
貴族はもちろん 貧しい人々にも手を差し伸べる少年は天使のようなことだろう

黒色の扉に導かれるのは その手を汚したいと心の底から願い 導かれたものだけ
少年は告げるのだ
｢あなたの人生を僕にくれれば、その願いを叶えてあげますよ｣

これは とある国で路地裏から事を発した
終わりなき腐った物語