名無しさん 2021-10-27 07:39:41 |
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──そうだな、では大包平。お前にふたつ教えてやろう。普通ひとりで茶を飲むのならば湯呑みはひとつだ。……それと、その茶葉は今日初めて開けたばかり。ここまで言ってわからない程鈍い訳では無いだろう?(自身が弟のようだと思っていたからだろうか。ころころと目まぐるしく変わり不満を露わにする表情さえも愛らしいと感じてしまう事に、粟田口派の長兄が言う言葉を不意に思い出せば、交わる視線そのままに声も無く双眸を眩しそうに細め。……まあ、俺の反応が思っていたより薄いだけで、ここまで不満げにされるのはそれはそれで良い気分ではあるのだが。顕現したばかりの相手を前に良い顔をしたかった、そんな少しの矜持から伏せていた秘密を愛らしい反応に応え打ち明けると、そのまま何処か挑発めいた笑みを向けてみせ)……それもそうか。では初めての手合せは俺が──「どっちが上か教えてやろう。」まずはひとりで上手く茶を飲み、眠れるようになったら、だがな。(──おお、赤い赤い。髪色に負けず劣らず染まる頬を満足そうに眺めては、最後に揶揄うことも忘れずに。だが、あまり茶化して臍を曲げられても困る。相手があまりにも真っ直ぐな性根故についつい衝動的に緋色の髪へ伸びそうになる手を、逆側の手で祈るように指を組んで抑えながら揶揄うのはそれまでにして。ずっと見られていては落ち着かないだろう、衝動も落ち着いたところでこちらも手を解いて視線ごと身体の向きを外へ向けると、小さな一口饅頭を口へ運び、味わってから熱さを物ともせずに茶を啜る。ねっとりとした甘いこし餡が胃の腑に落ちていくのを感じ、ほう…と満たされる心地にため息をひとつ。どうやら無事に「食べる」ことが出来た様子の相手を盗み見るように横目で一瞥し)
口にあったのならば良い事だ。俺も茶菓子は好きだぞ。なにせ茶に合うからな。……さて、饅頭を食べたら次はこれだ。楊枝は簡単に折れるから力加減は間違えるんじゃないぞ。(ぽろりと至極当然な事を呟きながら敢えて小さく齧った饅頭へは触れずに、次いで個包装された練切りを箱から取り出して一つだけ菓子楊枝と共に盆へ乗せ。これまでの相手の反応と性分を考え、少しだけ思考を巡らせてから一度念を押して)
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……──ふ、ふふ。そうだな。お前の言う通りだ、大包平。互いに無理のないペースで出来たら僥倖だ。待たせるのは得意ではないが、待つのは得意なのでな。大包平から届く「嬉しい」を心待ちにしていよう。出陣に関しても承知した。引き止めてしまってすまないな、こちらは蹴ってもらって構わない。引き続きよろしく頼む。
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