怪しいひと 2021-09-27 23:06:20 |
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( 耳に届いたあどけない声、聴き違いをしてはいなかったようだと密かな安堵。しっかりと胸に焼き付けた短い二文字は己の胸中に仄かな満足感をもたらしたが、ここで告げることでもなかろうと口を噤み。「俺の名前?俺はね、河原だよ。川のそばの土地のこと」彼女の問いかけに対するあっさりとした返答は実の所余り褒められた対応ではなく、合理的に考えれば名を隠すべき場面であった。けれども、負うた子どもの体から伝わるとくとくとした心音に、浮かれてしまったのが運の尽きとでも言おうか。まあ───いいか、と。背の体温に顔を見ずとも伝わる周囲への興味関心、視線をさまよわせるその様子は、微笑ましく愛らしく。見慣れたというより見飽きてしまった光景も、彼女にしてみれば魅惑の舞台と映るらしい。「ほんとだね、きらきらしてる……君の目の色と似ているね」他意のない呟きとほぼ同時、チャリと金属の擦れ合う音と共に取り出された点袋。横目で見たそれはどうやら彼女の財産とみて間違いないようだ。幼子特有の自立心云々から、一連の売買を自身で済ませたいと考えているのかと思ったが、その推測は全く的外れのようで。「そっか、」林檎飴の横幕を指した指は右手、束の間片腕を支えとしていた背後の子どもを再度両の腕で抱え直すと、その姿勢のまましゃがんでは地面へ降りることを促して。「俺のぶんも買ってくれるつもりだったんだ。ありがとうね。でも、大丈夫だよ」彼女の取り出した金銭に目を留めるも、制止するようにやんわり手のひらを押し付ける。そのままくるりと手首を返し、柔い手を軽い力で握って。店主らしき者も見当たらぬ無人の屋台、店頭に並べられた林檎飴の二つをおもむろに手中に収めては、その一つを「はい、君の」と屈託なく差し出して )
(/良かったです…!通行人については考えているものはあるのですが、お話中に盛り込んだほうが面白いかなー、と思い…!
楽しんで頂けるなら何よりの幸いでございます!それでは、質問等なければそろそろ背後は引っ込みますね。宜しくお願いします!)
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