怪しいひと 2021-09-27 23:06:20 |
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( 嫋やかな声色に息づいて硬く握った掌の力を解く。今も尚何処知れぬ顔で歩く者達を己の知っている人とは思えず、今更ながら彼が最初に言っていた意味を理解した。闇雲に尋ね回らなくて良かったと思う反面、彼らへの疑問が募るばかり。憧れの林檎飴を手に入れた事を忘却の彼方に置き去りにしていた様で、彼の促しにより思い出すと変わらず紅く煌めくそれへと視線を落とした。彼の言う事は正しい、人の物は取ってはいけない。けれど…少しばかり同情してしまうのはおかしな事だろうか。小さな悲鳴、では無く林檎飴が砕ける音に伏せていた瞼は持ち上がり、潰されて原型が無くなったそれを目の当たりにする。まるで最後まで通行人の欲求が満たされる事は無いと証明するように。彼の優しく穏やかでありながら何処かよそよそしく、淡々とした振る舞いに再度疑問を抱きつつもそれを言葉にする事は無く、「じゃあ一緒に食べまひょ林檎飴ちゃん。」代わりに一つとなった林檎飴を差し出して。見上げた視線は合わさる事は無かった、彼が何を考えているのか見当もつかない。同じ”迷子”でありながら、家があるのも不思議だが、きっと長い事ここで彷徨っていたのだろうと自己完結に至る。彼の自宅で色々聞けば良いだけだ、此処の事も先程の出来事も、彼の事も、──帰路も。「うん、」小さく返答を。彼の頬を掠めた風は白髪を僅かに舞い上がらせた。もう振り返る事はない、意思を込めて暖かさを取り戻した小さな指先で彼の小指を握り、遅れて一歩を踏み出した。「唄ね、河原に会えて良かった」それは当初この身には大き過ぎる不安を拭い慰めた彼への謝礼の言葉で。そうして賑やかな人混みのに紛れて二人の姿は消えて行き── 。)
(/お久しぶりです、お返事が遅くなってしまい申し訳御座いません…!此方も河原さんの優しさや不思議さ、ノスタルジーに耽ながらいつも楽しませてもらってます…!そうですね、とても区切りが良いので次の場面に移って頂いて大丈夫です!それ以降の展開につきましては考えが浮かび次第お伝えしますね!ご丁寧に有難う御座いました、今後とも宜しくお願いします!)
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