怪しいひと 2021-09-27 23:06:20 |
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( 憔悴の色はどうにか薄れていく様子。己の対応が未熟なのは確かだが、少しでも彼女の心配を拭えたならばと伸ばした手は、間違った対応ではなかったようで。「うん、ほんと。本当に痛くないよ」柔らかく耳朶の近くで囁けば、笑みはないまでもそれを区切りとして。腹部に感じる不意の衝撃に小さく首を傾げたのは一瞬、浴衣を締める黒い帯の辺りに回された小さな手を目に収めて状況を理解する。「そうだねえ。……食べたかったのかなあ、君の林檎飴…」白い棒を握る手にふと目を落とす。あまり肉付きの良いとは言えない細い手には固く閉じ、その肉に力の入っていることを示すもので。痛ましいと思うのはお門違いだろうか、胸中で実際にはあるはずのない眉が顰められていて。「でも、その飴は君のだから。いくら食べたくても、人のものをとっちゃいけないんだ」負担を感じる必要はないのだと言外に滲ませ、彼女の髪を撫でる手をそろそろと引っ込める。だから、その林檎飴は気にせず食べちゃいなよ、なんてそんな言葉を投げかけて。一方で落ちた飴の方へ自身の長い脚を差し出すと、その勢いままペきりと踏み潰してしまった。なんの感情もなく、なんの脈略もないそれは彼女の瞳にどう映るだろうか。「そう、お家。……あんまり面白いものはないんだけどね」周辺を見回す彼女が出した結論は是。頷こうとしたはいいが、一連の事の運びを思い出すとどうにも自身が誠を標していない気がしてならず、まるで誘拐犯になったような複雑な気持ちで視線をそらす。そらすと言っても墨染なのでどちらかというと顔ごとそっぽを向いた形であって、一際強く吹いた風が生温く頬のあたりを撫でた。「じゃあ、行こうか──唄」彼女へと向き直り、家のある方向と交互に視線を動かして。思い浮かべるものはまさしくあばら家と表すべき殺風景で粗末な家屋、隙間風が常に吹く木製の宿。最初の一歩についてくるかどうか、伺いながら砂利を鳴らして )
(/お久しぶりです!お返事が来るたびに唄ちゃんの可愛さに身悶えている背後でございます…!序章はそろそろ区切りかな?と思い顔を出させて頂きます。道中はカットして、次に場面転換であばら家へ到着、という形はどうかなと思っているのですが、大丈夫でしょうか?カットしたくない、または他になにかやりたい展開あればどうぞ仰ってください…!)
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