怪しいひと 2021-09-27 23:06:20 |
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褒めてくれるの、
( 素敵な──?一瞬理解が遅れたのは自身の名が彼女にとって" 良いもの "と捉えられた故で。せせらぎが落ち着かせた彼女の悪夢。今は聞こえない涼やかさに思いを馳せれば、なるほどそれはまた、「…川の音が子守唄だったんだね。」背後の幼子の足の裏が地面に接したことを横目で窺っては、純粋な疑問に首肯。段々と熱の移ってゆく手を仄かに意識しながら「要らないよ、お金なんてあったって仕方ない……」手にした林檎飴を左右に振りつつ、屋台の奥を示すように飴の先端を差し向けて。屋台の奥はどう見たところで何も窺えぬ闇、踏み入ったところで得る収穫もなし。ただその説明では不足だろう、砂糖菓子を見つめて瞳を輝かせる彼女の様子は一転。背丈に見合わぬ冷静さを目にしては、宥めるように「大丈夫だよ。いないんだ、ここのお店の人は。だって…」……。ふ、と彼女の後ろに視線がいった。通行人達はどこかを目指して歩く筈なのに、" 彼 "は" 彼女 "の持つ艶々と光る赤色の飴に視線を落としていて。ざり、ざりと下駄で砂利道を踏みながら此方へと。彼の茫洋とした瞳と己の目がかち合い、そして浅葱色の着物を着た" 彼 "はその口をぽっかりと開けて、" 彼女 "の双肩に手を掛けようと──)
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