怪しいひと 2021-09-27 23:06:20 |
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河原…貴方のお名前も素敵。唄のお家の近くにも小川があって、怖い夢を見た時はせせらぎを聞いて落ち着いてはりました。
( 聞き慣れぬ名だが追求する程勘の良さは持ち合わせておらず、彼への信頼の想いがまた一歩高まる。口の数だけ惑わされた小さな身は単純な思想でありながらも複雑に絡む疑心や警戒の糸は安易に解けず。ただ彼の事は不思議と信じてみたい事ばかり。指先から点袋が回収される事はなく、伸ばした腕は暫し空を彷徨う。小さな揺れに再度その背にしがみ付きつつ、視界が見慣れた位置へと戻ると直ぐに察して体温を分かち合った背中より離れ、砂利道に両足を着き。爪先を揃え、羽織の皺を払い、背筋を伸ばした状態で彼の顔を下から疑問を抱いた瞳で覗き込み。「要らへんのですか?」浅はかな知識ではあるが、物事には何にでも対価があると乳母が教えてくれた。本日も同様に。成人よりも体温の高い己の掌は熱く、大きな掌に包まれるとその熱は直ぐに彼へと伝い。通行人の邪魔にならぬよう直ぐ隣へと歩み寄り、店内を見渡して。在るのは真っ赤に熟れた林檎飴のみ、その一つが彼の手によって伸びてくると、点袋を一旦帯に挟み落とさまいと細い棒部分を握って受け取って。可愛らしい見た目に反して意外にも重みのあるそれは提灯の光が反射し、硝子細工の如く煌めきを放っている。砂糖の甘い香りが鼻腔を刺激して、自然と唾液が口を満たし、思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。表情は僅かに綻び、芸術にも思えるそれを幾度と眺めて「食べてまうの、もったいないです。やけど、とってもとっても美味しそう。」一生の宝物に出来たならば、そんな純粋な考えに浸りつつ、通行人に背を押されたような気がして天秤に添えた誘惑よりも憂い事が優先立つと再度彼の顔を見上げて、林檎飴を握ったまま寄せた眉を露に)
…お店の人、カンカンにならしまへんか?おにぃ、林檎飴ちゃんのお店の人とお友達ですか?
(/成る程!楽しみにお待ちしておりますね!有難う御座いました、此方も一旦下がりますね、宜しくお願い致します!)
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