三丁目のミケネコさん 2021-09-10 12:59:26 |
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(お昼時も近いからか、向かった先のファミレスはそこそこの賑わいを見せていた。外まで漂うレストラン特有の食欲をそそる香りに釣られ現在進行形で通行人が店内へと吸い込まれていく中、入口を前に足を進める気配のない隣へと視線を向ける。つい先程迄冗談を飛ばしていたのが嘘のように、どこか思い詰めた表情を見せる彼女。"入らねーの?"そう訊ねようと口を開いたが、ぱんと頬を叩く音と相手の提案によってそれはかき消される。
気紛れにころころ変わる意見と向けられた若干のぎこちない笑顔。違和感を覚えてファミレス店舗へ視線を向けると、窓越しに既視感のある顔がいくつか見えた。ぱっと名前は出てこないけれど、確かクラスの女子生徒に同じ顔が居た気がする。つい最近別のクラスメイトから彼女との関係を指摘されたことも鑑みるに、まさか彼女はそれを危惧して――?
分かり易い奴だと思った。あの勢いを貫いて無理にでも自分を連れて行けばいいものを、突然そんな優しさを見せるから。悪いがその笑顔で騙されるほど勘は鈍くない。)
…へたくそ
(短く息を吐いて、ぼそりと呟いた。そして徐に相手の片手首を掴めば、了承も得ずにつかつかとファミレスとは反対方向へ足を進める。普段振り回される側としてこのくらいの報復は許される筈だ。
行先も告げず黙々と歩いて到着したのはカラオケボックス。二人分の受付を済ませ、割り当てられた個室へと彼女を押し込むと備え付けのソファに腰を落とす。要は人目のつかない場所に移動できれば良かったわけで、尚且つカラオケはファミレスのような本格的な食事とまではいかなくとも空腹を埋めるくらいならどうにかなるだろう。机上に置かれた広告やキャンペーンなどの紙の束からフードメニューを抜き取ればそのまま相手へ差し出して)
腹減ってんだろ、好きなもの頼めば。
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