ノーマル 2021-09-07 06:50:28 |
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(彼が出て行くのを見送った後、薄暗い部屋を少し見渡してから、ふぅと息を小さく吐き、立てた膝に顔を埋める。…多分、不安を見抜かれていた、と思う。寸前に見た彼の笑みは穏やかで、名前を呼ぶ声が優しく聞こえたから。メイジに生まれた時点で不幸も不運も約束されてしまったようなもので、実際にロクな目に遭ってこなかった。だから、今更家を燃やされた程度で落ち込むのも馬鹿らしい。さっさと立ち直って、体も早く治して、少しでも早くここから離れるべきだ。それが彼の為になるのも分かってる、分かってる、けど…)
………どうすればいいのか、わからないよ…
(ぽつりと口をついて出た言葉は、気付かぬ内に漏れた本心だった。ここから離れて、それから自分はどうすればいいのだろう。唯一の居場所は無くなった。目的も目標も夢も願いも何も無くて、頼れる唯一の人は行方知れず。死にたくは無いけれど、生きなければいけない理由も意味も、本当は無くて。…ああ、もう、これ以上考えても仕方が無い。どうせどうにもならないのなら、ここを出て行くその時までは、命の恩人である彼に少しでも貢献出来るようにしよう。初めて出会った、まともで好感が持てるノーマル。きっとこの先、一生出会うことの無い存在だろう。彼みたいな人間もいるのだと知れただけで幸運だったのだと、そう思えばいい。少し心が軽くなった気がして、そのまま後ろにぽすんと倒れて布団を被り直し、目を閉じる。薬を飲んだお陰かすぐに眠気が襲ってきて、そのままゆっくりと意識を落としていき)
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