管理人@玄 2021-09-05 18:07:45 |
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(>34 ウェイド様
自身に向けられる感情の乗らない瞳をじっと見返し、他の兵卒とは何かが違うと首を捻る。そのまま全身を見つめるように視線を動かしていけば、同じ色のコートをつけていることに気づき妙に腑に落ちた。砕けてはいるが丁寧な挨拶を返す男に1拍置いて自身も名乗っていなかったことに辿り着く。まだ人間らしい慣習のある男に改めて自身の人離れした悪習を突きつけられた気がした。
「あァ、ウェイド少尉ね。ご丁寧にどうもォ。俺ァ、オティスだ」
名前だけ名乗り満足していたが、ふと階級も必要だったかとついでのように中尉だと付け足す。どうも階級というものは堅苦しくて好ましくないと思いつつ、男にはコートの色も一緒だし少尉も中尉も変わらないだろうから気楽に話そうやと伝える。何となくではあるが、男に妙な同族感を覚えたのだ。珍しいこともあったものだと男の説明を右から左へ流す。おイカれ連中の犠牲になったのはご愁傷様としか言いようがなく、それ以外の情報には大した興味が湧かなかった。
「ふぅん…若いの、ねェ。ウチにいたら腕一本くらいの犠牲で済んだだろうに、勿体無いことしたなァ」
差し出された資料をパラパラ漫画をみるかのように、ぱらぱらと小気味いい音だけを響かせて眺めるふりをする。次いでに若くない方の遺体を見れば、興味のなさそうなふぅんという溜息だけが漏れた。若いのと称された遺体を見ながら思ったことを口にすれば、何人かは想像したのか口元に手を当てる様子が視界の端に映った。そんな様子をさらっと流し見ながら、兵卒はこんなに軟弱だったかと首を捻る。
「吐くなら外の野次馬共にかけてやれよ。そうすれば外にいるお仲間が助かるぜェ」
ハハハと乾いた笑いと共に走り去っていった背中に野次を飛ばす。可哀そうにと隣で聞こえた呟きに、可哀そうなのはアレの介抱させられる奴らだろうけどなとぽそりと呟く。ああいったものは臭いや見た目等で貰うことが多い。そのため、精神的にやられ気味の兵卒たちに伝染していきそうだとあたりをつけて鼻で笑う。
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