テロスの夢【ファンタジー/戦闘/3L/シリアス/初心者・途中参加歓迎/】

(>26 ウェイド・グゥイン様)

陽射しと人の熱気で湿った暑さのある市場通りを気まぐれに散策する。普段より耳に残る喧騒に、いつもの碌でもない事件を嗅ぎ取りながらふらつくこと数刻。先程から濃くなっていく不快な臭いを振り払うように首を左右に振れば、どこからともなく使い込んだ布が目の前に現れる。
「あｧ、ブギーか……悪ｨな」
相棒の涎が染み込んだボロ布を受け取れば、焦点の定まらない瞳が真横から見つめてくる。独特な雰囲気を纏う瞳に背筋のむず痒さを感じると、蝋燭の燈のようにふっと瞳が消えた。しかし、彼の声だけは耳が拾い上げ、市場の喧騒に確信を得た。例の発作ね、と溜息と共に心の中で呟けば、発作ならばお前の片割れといい勝負をしていると小馬鹿にしたような声が返ってくる。マルバスの方が数倍イカれてるだろと言いかけたところで、見慣れたデザインが視界を過り口を噤む。
「ハハッ、そんなに心配ならてめｪらで犯人探せばいいンじゃね？まｧ、それで死んだらご愁傷様ってことで」
現場保存と野次馬の対応に挟まれて可哀想なほど右往左往していた兵卒を思う存分眺めた後に近づいて一言。彼らを助けようと思ったわけではないが、どうも野次馬の言葉選びと態度が気に食わない。何もできない奴が意見できる立場にあると思うなよ、と嘲笑と共に言い放つが返ってくるのは青褪めた顔たちのみ。反抗してくることを望んでいたが、どうやら相棒が茶々を入れたらしい。
「気絶しないだけ感心だなｧ。こんな無能に構ってないでさっさと仕事しな」
目を見開いて固まっている兵卒2人の頭に手を置くと、軽くぽんぽんと叩く。マルバスにいつもやっている癖を無意識に披露したところで漸く家屋へ足を向ける。
「へｪ、案外綺麗にしてンだなｧ。おイカれ連中も綺麗好きってか」
血痕や乱雑に転がった家具を気にもとめず踏みながら進めば、青褪めた顔たちがお出迎えしてくれる。血やら何やらが混ざった独特な臭いをわざわざ吸い込むことはしなかったが、相棒の涎付きボロ布をくるくるとぶん回す。?「ンｧ、そんな顔してたら皺がこびりつくぞｫ」
事件現場にそぐわないケラケラという軽い笑いを響かせながら、目の前の人物に声をかける。