鬼娘 2021-09-05 10:06:47 |
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(それにしても旦那様はずるい。妻に可愛い我儘を言われて心底困っているお姿も、困りかねて眼鏡を押し上げるお姿も、眼鏡を押し上げるスケベそうな手指も、時計に視線を配る色気たっぷりの横顔も。ひとつひとつの仕草が何故こんなにもセクシーなのだろうか。セクシーだという自覚はあるのか。色気がすごいことで有名な俳優よりも色気がすごい。
──と、気付けばこんな具合で完全に気をとられているうちに旦那様の魅惑的な唇が僅かに開いて、ごにょごにょと何か仰ったような気がする。色気がゴイスーな旦那様についつい見惚れてしまっていたせいで最初の方はよく聞こえなかったけれど。なんと仰ったのだろう。最後の方には「打ち解けてから」と仰った、ような。……ああんもう!どこまでもウブな旦那様が愛しい……!
しかしこういうのは寧ろ、名前で呼んでいるうちに親近感が沸いてきて打ち解けやすくなるのでは。それにこれでは[交換条件]は不成立、よって机の移動はなしということになるが旦那様はそれで構わないということだろうか。)
ほやったら机は離さ、
(──「鬼月さーん!隣のクラスの雪代さんが呼んでるよー!」
[交換条件]不成立につき、旦那様からの「机を離して欲しい」という謎要求を突っぱねようと声を上げたその時、未だに顔と名前の一致しないクラスメイトの女子生徒から突如名指しで呼ばれ、出掛けていた言葉を途中で引っ込めてしまった。旦那様との取引は一旦中止する運びとなり、仕方なく瓶底眼鏡から目線を逸らす。そうしてくるりと後ろを振り返り、教室の出入口付近に向けて目を遣るとそこには、感情の読めない能面の如き真顔でじぃ………っと此方を見据えている1人の綺麗な女子生徒がお人形さんと見間違うほど可憐に佇んでいた。雪のように白い肌は上質な陶器のように滑らかで。肌よりも真っ白な髪は肩に掛かるくらいの長さで切り揃えられている。背丈はみやびと同じ程。大きくて可愛らしい二重の目をしているのに、何が残念かって深い湖の水面のように碧い瞳に生気が宿っていないことである。
──『雪代まふゆ』……それが彼女の名前だ。名門雪代家といえば、その名にもあるように雪を自在に操る雪女の女系一族。みやびとは昔馴染みであり、他ならない唯一無二の親友でもあった。その彼女がみやびに向かって手招きをしている。)
……………あっ。
(──そういえば今日、まーちんからオススメの漫画を借りる約束しとったんやった!にしても持ってくるの早過ぎんやろか。別に昼休みでも良かったのに。
そんなことを考えながら席をたち、彼女の方へ歩みを進めようとして…)
すぐ戻ってくるけん、机はこんままでっ!
(もちろん旦那様に念を押すのも忘れない。目を離した隙に机を元の位置に戻されかねないからだ。
しっかり釘をさして置いてからさらっと艶やかな髪を翻し、彼女の待つ出入口の方へ向かう。しかしこの時はまだ、まさか残りの休憩時間全てを雪代まふゆによる漫画紹介という名の推し語りに費やされることなど知る由もなかった──)
※。.:*:・'°☆
(/突然ですが背後より失礼します。このあとの流れとして世界史の授業に入るかと思うのですが、ここまま授業を続けていただいても、すっ飛ばして2限目3限目…~昼休憩と適当に場面転換していただいても大丈夫です。個人的には体育の授業で身体能力測定もしくは普通にスポーツをしても面白そうだなと思ったりしています。
それから机も隙をみて離していただいて大丈夫です。みやびが何度でもくっ付けに参りますので…!)
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