鬼娘 2021-09-05 10:06:47 |
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ヒィッ……!
(鬼月の脳内で急展開を迎えた桃色の妄想がフルスロットルで襲いかかってくる。あまりの悍ましさに鳥の首を絞めたような悲鳴が出てしまい、ガタガタと椅子を鳴らして身を引いた。30cmくらい。
──冗談じゃない!誰がチューするか!どうしてそうなった!?リアル「俺のだから」って何?いらねぇよ!?そのキス待ち顔をやめろぉ!!
どうしてそうなったのかは、びっくりするほど鮮明にその思考回路が聞こえてきたからまぁ分かるんだが、そもそもそうはならんだろと声高々にして言いたい。脳内ショッキングピンクかよ!
そもそも鬼月の所有権を主張する気もなければ、旦那様になった覚えもない。そんな素振りを見せたこともないのに、鬼月の自信はどっから湧いてくるんだ。もう恐怖心も一周回って尊敬に変わりつつあった。自分もそれくらいポジティブに生きれたら、この女を突っぱねることもできただろうに。
目の前には、妄想の桃色に負けないくらい紅潮した頬でキス待ちしてる鬼月。背後には窓。0/10で窓から飛び降りて彼女から離れたかったが、鬼月は空を飛べる。空中でキャッチされたりなんかしたらもう不登校になるしかない。青ざめていく自分の顔と背中をつたう冷や汗を感じながら、深呼吸をした。カーテンが「こっちへおいで」と誘うように揺れる。)
あ、っと、その……
(瑞々しくぷるんとした彼女の唇は色っぽく、とても柔らかそうだ。普通の男子なら喜んでそれに吸い寄せられただろうが、あいにく夏樹にとっては刺激が強すぎて、逃げ出したくなるだけだった。だがしかし、逃げてばかりでは何も解決しないと腹を括ったばっかりだ。鬼月の精神攻撃に負けるわけにはいかない。今日こそ、その無駄な胸の高鳴りとピンク色の思い込みに終止符を打ってやる…!)
机……離してくれないか。
(そう。誰の許可を取ったのか分からないが、この暴走鬼娘は互いの机を勝手にくっ付けていた。列を乱すんじゃない。先生もなんか言えよ。
ともかく、このまま真隣で世界史の授業中を受けるのは真っ平ごめんだった。視線が痛いしうるさいしなんかいい匂いがして気が散るからだ。なんとかしてパーソナルスペースだけは死守しようと、はっきり、分かりやすく、拒絶の意を唱え)
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