鬼娘 2021-09-05 10:06:47 |
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(行き交う生徒から向けられる無遠慮な視線を浴びながら、旦那様の後に続いて校門を潜り、昇降口へと向かう。そうして上履きを取り出そうと自分のシューズロッカーを開けた瞬間、中から便箋が数十通、バラバラッと音を立てて滑り落ちてきた。入学して間もなく、何処の馬の骨とも分からない不特定多数の者から、こういった形で恋文のようなものを送り付けられてくるようになったのだが、その数は日に日に増えていく。次第に日常となりつつあるこの光景に嫌気を覚え、思わず呆れ混じりの小さな溜息が溢れた。周囲にも分かるよう、旦那様との仲を常々アピールしているというのに、どうやら未だ認知されていないらしい。
ともかく、このまま放置しておくわけにもいかないので、心を虚無にして、辺りに散乱した便箋を渋々かき集めると、それらを束にして纏め、鞄の中にぐっと押し込んだ。しかしそうしている間にも、旦那様は何も言わずにすたすたと先へ行ってしまう。)
! 旦那様、待っ……
(慌てて上履きに履き替え、直ぐ様後を追い掛けようと廊下に踏み出す。途端、目の前に大きな何かが立ち塞がった。…またコイツか…。見覚えのあり過ぎる壁を辟易しながら見上げると、紅い髪に紅い瞳、筋骨隆々でやたら図体のデカイ大男が、自信と欲望に満ちた鋭い眼差しで此方を見据えている。
──「俺と闘え、鬼月。」
1学年上だというコイツは、入学式の翌日にみやびに一目惚れしたといって交際を申し込んできた狼男。自分より強い男にしか興味が無いと秒で御断りしたら、その日から毎日決闘を挑んでくるようになったのだった。)
……邪魔じゃ、退け。
(旦那様とのラヴラヴモーニングタイムの邪魔をする者は、先輩だろうと容赦しない。退く気はないとばかりに襲い掛かってきた相手の片腕を、風呂敷包みを持っていない方の手で掴んで容易く制すると、そのまま相手の勢いを利用して軽くいなし、ぽいっと廊下へ放り投げた。
「「おおーっ!!」」通りすがりの野次馬から歓声が上がり、“今日も”みやびの勝ちが決まる。ズザザーッと廊下に倒れ込んだ先輩に見向きもせず、すっかり見えなくなってしまった旦那様の後を急いで追い掛けるのだった。)
(──なあさっきの見た? 見た見た、あの先輩今日もやられてたよ。1年の頃から柔道部の主将を務めてるらしいけど。 みやびさんツエーッ! つか自分より強い男にしか興味がないらしいぜ。 そうなるとマジであの眼鏡何者だよ。 人間だよな?フツーの。 能力持ちじゃねぇの? 無害そうにみえて実はスゲー強いとか?
何とか追い付けた旦那様の後に付き従って教室に入ると、いつものようにクラスがざわついていた。彼らが何を話しているのかよく分からないし興味もないので、次々と掛けられる挨拶にだけ淡々と応じながら、旦那様の席の隣にある自席に着く。すると席に着いた途端、旦那様は机に突っ伏して寝てしまった。
登校中、思い付いたようにいきなり歩く速度を速くしたり遅くしたり、急に角を曲がったかと思えば猛スピードで駆け出してみたりと、いつの頃からか始まった旦那様の朝トレ。涼しい顔でこなしているようにみえたが、その実疲労が溜まっていたのかもしれない。暫くの間だけ、そっとしておくことにした。)
(開け放たれた窓から爽やかな風が流れ込んできて、無造作な黒髪をふよふよと揺らす様が何ともいとおしく、目を離すことが出来ずにじーっと眺めている。ゼロ距離で。寝ているのをこれ幸いと、互いの机同士をぴったりくっ付けてやったのだ。
熱血担任もちらりと此方を見たようだったが、仲良きことは美しきかな!という信念らしく、特段注意を受けることもないまま1限目が始まった。
1人の真面目そうな男子生徒が学級委員に立候補し、後に続いて次々と委員や係が決まっていく。旦那様と一緒が良いなと思っていると、面倒ごとの多い美化委員は不人気なようで誰も立候補しようとしていなかったので、ここぞとばかりに勇んで片手を伸ばし、凛とした佇まいで)
美化委員に立候補する。わらわとだん……く、九段君が。
(発言後、クラスメイトが一斉に此方に注目した。頬がじわじわと熱を帯びていくのが分かる。
──ひゃああ初めて君付けで呼んでしもたっ……!
頭の中はそのことでいっぱいだった。気恥ずかしさから目線を下に落として)
※。.:*:・'°☆
(/此方もやり取りを楽しんで頂けるように精一杯努めて参りますね!
投稿頻度に関しましても、此方こそ長考なものでお返事が遅くなってしまって申し訳ありません…!
ですので、夏樹君背後様もご自分のペースでまったりお付き合い頂ければ幸いです。
諸々承知しました、お気遣いくださりありがとうございます!
それでは一度引っ込みますが、また何かありましたらお呼びくださいね。すぐに駆け付けますので…!引き続き、よろしくお願い致します。〆)
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