鬼娘 2021-09-05 10:06:47 |
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(恐怖の根源に立ち向かおうと、自ら進んで挨拶をしたことをさっそく後悔した。決して女子に声をかけるのが恥ずかしかったからとかではなく、待ち伏せしていた女の喜びように引いたからだ。確かにいつもは返事してるだけだけども。たかが挨拶だぞ、落ち着いてくれ。
ヘッドフォンを装着して車通りの少ない住宅街を進む。こうして耳を塞いでも念話に対して防音効果があるわけではないが、『自分の世界に篭っていたい』とボディーランゲージで伝えられるため、ヘッドフォンは便利だ。しかし残念ながら、己が夏樹の妻であると信じてやまない異常者には効果がなかった。何故だか知らないが、彼女には夏樹の能力が知られているからだ。普通はビビって距離を置くだろうに、鬼月はこれ幸いと激重感情を全力投球してくる。迷惑極まりない。
迷惑と言えば先程から後方の鬼月がうるさい。彼女の心の声がうるさいのはいつものことだからこの際置いておくとして、視線がうるさい、というか痛い。ハートの尖ったとこが刺さってる。あと女の子がスケベって言うんじゃありません!!
そう叫びたいのをぐっと堪えて、歩く速度を上げた。少しでも距離を開けたかったのだが…なんだこれ全然離れない。ずっと半歩下がったままついてくる。緩急をつけてみても距離がブレない。怖い。古風な価値観の良き妻のつもりだかなんだか知らないが、実際は距離感のバグったただのストーカーでは?
精神的にも肉体的にも若干疲弊しつつ、ゆるやかな坂を登り、高台に建てられた高校を目指した。)
(校門近くまで来ると、同じ制服を着た学生の姿が多くなる。その誰もが、とまでは行かなくても、だいたいの人はすれ違いざま鬼月に目を奪われていて、その近くにいるダサ男には気付いていない。それだけ目を引く美貌を携えてるのに、冴えない同級生を配偶者だと思い込んでるのが残念すぎる…と上履きに履き替えながら世の不条理を嘆いた。
教室のほうもそこそこ賑わっているようで、席に向かう途中まばらに挨拶を向けられる。もちろん自分ではなく鬼月がだ。その様子を横目に窓際の自分の席に腰掛け、机の上に突っ伏して寝たフリを決め込む。これもまた『他人と関わりたくない』という意思表示だ。社会性のある生き物らしく、こうして自ら孤立しようとすれば人はすぐ群れから弾き出してくれる。そうして誰とも深く関わらず生きてきたのだが、鬼月が現れてからは不本意な注目を浴びてしまっていて、鬱陶しい。
──みやびさん、またアイツと来てる。変な組み合わせ。どういう関係なんだろ。羨ましい…。俺もみやび様と登校したい!
おい最後、そんなに好きなら俺と変わってくれ。切実に。
激しめのロックを聴いてざわつく教室から気を紛らわし、待つこと十数分。担任である若手の熱血教師がやってきて、ホームルームが始まった。今日は一限目まで使ったLHRで、各種係や委員を決めるらしい。入学からしばらく経ち、クラスメイトともある程度打ち解けてきたこの時期に係を振り分けるのがこの学校の伝統らしい。まぁ自分には関係ない話だなと早々に興味をなくし、ヘッドフォンを外してしまったことを少し残念に思った。目元が隠れているのをいいことに二度寝でもするか、と協調性のないことを考えて)
(/嬉しいお言葉をありがとうございます!遅筆故にお待たせしてしまって申し訳ないですが、出来上がったものを楽しんでいただけたのなら感無量です…!
今後の流れについても了解しました。質問も今のところありません!夏樹を強引にブンブン振り回して貰って大丈夫ですので、こちらに気を遣うことなくみやび様の思うままに動いてもらえましたら嬉しいです…!それでは、こちらも隠れさせて貰いますね。よろしくお願いします!)
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