暗殺者ちゃん 2021-08-25 08:06:43 |
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( 一国の王子として生を受け18年、絢爛豪華な一級品に囲まれて、今日も代わり映えのない1日を過ごす。起床し着替えて朝食、政治や歴史を学び、気付けば昼時を過ぎて少し遅い昼食。外に出ては日が暮れるまで、愛馬のアリスと敷地内を散歩。夕食、入浴、そして睡眠。しかし、数ヶ月程前から理由の無い漠然とした不安を感じていた。物心ついた時から嫉妬や憎悪に晒され続けて、今更そんなもので悩む事はない。謎の不安感を抱えたまま布団に潜り込むが、滑らかなシルクの布地でさえ鬱陶しく感じてしまい、すぐには眠りに付けなかった。やっと意識が遠のいてきた頃に、何やら女の声が聞こえた。就寝時は使用人の入室は誰一人許していないし、夜這いをするような相手もいない。ほんの数秒で辿り着いた答えは暗殺者だ。ゆっくり目を開けると、黒いもやのかかった暗殺者らしき人影と刃物らしき物が僅かに光を反射させるのが見える。寝ていた為か、免れない死を目の前にしている為かは分からないが、若干掠れた声で独り言のように言葉を発して、視線はその人影から天井へと移し、ずっと遠くの方を見つめるようにして)
…貴様か…不安の原因は。…血が飛び散るのは勘弁してくれ…、安らかよりも、綺麗なまま逝きたい。
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