名無しの悪魔狩り 2021-05-03 21:36:06 ID:2499132ca |
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舌を垂らしひくひくと四肢の先を痙攣させて横倒しになった男は、どうやらとうに意識を手放している様で声一つ発さず。
されど喉奥から響く男のものでは無い何かの叫び声。
それはある一本の樹が時折撒き散らす花粉を多量吸い込むことで、人体の内側に根付いて覚醒し、宿主の心身を食い荒らし成長する。
『遍くの忌み子』と呼称される、悪魔狩りの間でも特に警戒すべきであると認知されている悪魔の一種である。
「げぼっ……「キィ、ギィ、キィイイイイイ」」
宿主から忌み子を引き剥がす、リリアの対処法は理にかなったものだ。
腹部へと加えられた打撃は激しい嘔吐感を催させて。
男のえずきと微かな意識の目覚めと共に、喉の浅いところまで這い上がって来ていた忌み子は水気を含んだ音をたてて石畳に吐き出される。
「……ぁ……」
狂気の根源を切り離された男は、声にならない声を漏らしたのを最後に再び意識を手放した、弱弱しくほんの微かに上下する背を見るに死んではいない様だ。
リリアのコートがその目論見通りに緩衝材の代わりを果たしたからだろう。
一方、体外へと出てしまった忌み子はのろのろと這い歩き始めた、次の栄養源を、次の狂気を求めて。
嗚呼、丁度目の前に美しい銀の髪を持った健康状態優良そうな女が居る。
しかし一度こうなってしまえば、悪魔狩りが対処することは簡単な筈だ。
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