夜には山向こうで人を喰い、朝には遺品の着物やかんざしを土産に花嫁を愛でる。薄氷を踏むような二重生活は彼女が着物についた血に気付くことで終わりを迎える。この世で一番優しく美しい人の口から息の根が止まるほどの拒絶を浴びせられて絶望したいが、何もかも見ぬ振りをして喜んでみせるくらい、此方に堕ちていてくれても良い。花は腐り落ちても美しい。