怪談語り部 2021-04-06 21:02:16 |
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……これは会社で体験した話なんだ
(スーツを着た三十代くらいの男性がゆっくり口を開けて)
俺が勤める会社は…いわゆるブラック企業とか呼ばれる部類の会社だった。今は辞めて別の会社に居るがな……
俺は幽霊とかオカルトを信じてなかったんだ。でも、実際に見ちまった。
その日も残業で終電ギリギリだった。急いで荷物をまとめて会社を出ようとしたんだ。
会社には古いエレベーターがあって、まぁ…古いって言ってもちゃんと中は綺麗なんだけどな…
前に立ってエレベーターを待ってたら横からコツン、コツン、って足音が聞こえたんだよ。
横をみたらスーツ来た女が此方に来てた。オレは残業のストレスからだったんだろうな、最初は「こんな人、ウチに居たか…?荷物もないし…」なんて思ってたんだけどよ、直ぐにエレベーターが来てあんまり気にしなかったんだ。
とりあえず、エレベーターに乗ったらあの女も乗ってきて扉はしまった。
エレベーターは降りて行って一階に着いた。
オレは降りようとしたんだよ。
そしたら後ろから肩をグイッて引っ張られて後ろに倒れちまった。
尻餅ついて扉みたら閉まったんだよ。しかもボタンはオフィスがある五階の明かりが付いてた。
で、「テメッ、何しやがる!!」って後ろの女がやったと思って見たら
女が居ねぇんだよ。
「背筋に寒気がする」って言葉あるだろ?
俺は初めてそれを体験した。
俺は他の階のボタンを何回も押したんだよ。
他のボタンは何の反応もしなかった。
そして、オフィスがある五階に着いた。
キィィンて扉が開くだろ?
俺は嫌な予感がして扉を閉めるボタンを連打した。でも反応しねぇ
そしたら
コツン、コツン。
俺は直感で思った。
あの女だ。
俺は一目散でエレベーターから出て非常階段から逃げた。
一階にやっと着いた時な、エレベーターって会社があるビルの扉の目の前にあるんだよ。しかもビルの入り口はガラスみたいな扉。
入り口に向かって行くときにな、鏡越しに確かに見えたんだよ。
エレベーターが開いた瞬間、天井から女の長い髪と、顔が垂れ下がってた。
そして、目が合っちまった。
そのあとはよく覚えてねぇ。
電車に乗って家に帰る断片的な記憶はあるけどな…
(男は、蝋燭を一本消した)
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