△ 2021-03-29 01:55:20 |
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(見上げた桜はこの街の風に吹かれゆらゆらと揺れている。時折花弁が散って空中を舞いながら地面に落ちていくのも綺麗だ。暫しその光景を目に焼き付ける。落ちていく小さな花弁の一つが風に乗って彼のハットの上に乗った。薄らとピンクに染まったそれを見ているととある小説家が桜の木の下には死体が埋まっていると綴っていたのを思い出した。彼によると桜は死体から養分を吸い上げているからこそここまで綺麗に咲いているらしい。勿論それが小説の上での表現であるのは重々承知しているが不思議とずっと頭に残るような言葉だ。もし本当にこの桜の下に死体があるならばこの綺麗な景色はどれだけの屍の上に成り立っているのだろうか。そう思えば花弁の薄紅すら吸い上げた血で染まっているようで美しさと冷たさを感じた。この仕事をしていれば死はそう遠くない所にある。ボタンが掛け違っていれば今こうして花見をすることもなかっただろう。自分達の目指す未来のために到底走るのを辞めるつもりはないが、___もし死んだら、この街の土に還って君の好きなこの街を彩る桜になってもいいなと空を仰いだ)
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