△ 2021-03-29 01:55:20 |
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…何だか変だと思ったんだ。やっとモヤモヤしていた謎が解けたよ。 …僕は、君と出会うずっと前から死んでいたんだ。この身体もデータの塊で、本当は食事も睡眠も必要ない。…君と違って人間じゃないんだよ。
(ぽつりと吐き出すように紡いだ言葉は自分が思うよりも落ち着いた物だった。衝撃的で信じ難いことであるはずなのに、あるべき場所にぱちんとピースがハマったようなそんな感覚さえした。まっすぐと目の前の相手を見据える。その目は分かりやすく見開かれていてこちらを凝視している。普通ならば大切なこの相棒とも出会うことも無かったのだ。そんな相手に今度は自分の口でその事を伝える。その声は酷く凪いでいて自分のことながら別人の話をしているような気分だった。自分の手のひらに視線を落とす。一度自覚すればそうとしか思えなくて試しに指先に意識を向けてみるとデータは分解されて淡い緑の発光を伴って空気中に解けていく。それを見た相手の顔は苦しそうに顰められる。そんな顔をさせたい訳じゃないのに。再構成した指先で相手の頬に触れる。データではない相手の身体は命の温もりを宿した温かさを持っている。慣れ親しんだそれに口許が穏やかに笑みを作る。再び目を合わせる。相手に伝えるように、そして自分に言い聞かせるように吐き出した言葉は僕らが導き出した真実だった。)
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